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「適当なところに座っててね〜。今飲み物入れますからー」
私はキッチンに向かうと、支度を始めた。
何か温かいものがいいだろうか。
そう思って冷蔵庫を開けて中身を確認してみた。
…。
缶のお酒がずらりと並んでいる。
あとは牛乳と2リットルのお水と生卵の入ったパック。
な、なんだこれは…。
いや、これは私の冷蔵庫だ。
ま、まぁ独身女の冷蔵庫なんてこんなもんよ！
…。
仕方ない、ここは…。
―
私がリビングに戻ると、彼はトイプーのバンビと一緒に部屋の隅で座り込んでいた。
バンビの頭を優しく撫でている。
その目もとっても優しい。
あぁ、やっとこんな顔も見られた…。
「はーい、できましたよ。そんな隅っこにいてないで、こっちに来て一緒に乾杯しましょう」
その言葉で彼はちょっとだけうつむくと、目線を泳がせながら、まるで壊れたロボットみたいにぎこちない動きでテーブルの方へやってきた。
滅茶苦茶緊張してるなぁ…。
まぁ、仕方ないけど…。
「はいどうぞ」
そんな彼の前に、私は湯気の立ったコップを置いてあげた。
中にはホットミルクが入っている。
そして私はもちろん缶のお酒なのだ。
これを飲まないと、一日の終わりを感じられないのよ。
「…」
彼は目の前に置かれたコップをまじまじと見つめている。
もしかして、これが飲み物ってことも分からないのかな…？
「ホットミルク、嫌いだった…？」
一応訪ねてみると、彼は小さく頭を横に振って、両手でそっとコップを包み込んだ。
良かった。
「じゃあ、乾杯！今日からよろしくね。私はあなたが記憶を取り戻すまで全力でバックアップするから安心してて」
そう言って、私は缶のプルタブを開けて口を付けた。
「ぷはー！おいしい！」
やば、ついついいつもみたいに大きな声出しちゃった。
驚かせちゃったかな…。
そう思って彼の方をちらっと見てみると、意外なことに、彼はちょっと興味津々でこっちの方を見ていた。
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作者名：milkssss | 作成日時：2020年2月17日 15時
