愛と合図【M!LK】 ① (ページ1)

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「はぁ…」

私は、暗くなった夜道を一人帰路につく。
8月も後半ということもあり、汗ばむ気温が続いている。
疲れた体を引きずって、真っすぐ愛犬の待つマンションへ一歩、また一歩と歩みを進めていた。

就職して5年。

短大を出て、憧れてたキャビンアテンダントになる夢を諦めて、普通の商社に入社。
何の代わり映えのない退屈で華のない、胸のときめきも、ドキドキするような興奮もない平凡な日々を過ごしていた。

「はぁ…」

自分でも気が付かないぐらい、口からはため息しか出てこない。
何か、心が躍るような、生きてるって感じるような、そんな刺激的なことが起きないかしら。
なんて、頭の中でぼんやりと考えていると、大きな川の土手に差し掛かった。
いつもは、何の変わり映えもしない土手なのだが、今日は何やら様子が違った。

「ん？」

私は、薄暗い土手の下を目を凝らして見つめる。
何かある。
黒い影で見えづらいが、確かに何かが土手の下に転がっている。

何だろう…

半分の恐怖心と、もう半分の好奇心。

気になる…

でも、怖い…

こんな暗い時間に、得体のしれない何かが転がっている。
私の心は揺らいだ。

でも、もしかしたらこれが私の退屈な毎日を何か変えてくれるかもしれない。
私はそんな気がして、恐る恐るその何かに近づいた。

段々と、等間隔に配列された街頭の明かりに照らされて、ぼんやりとその何かが明るみになっていく。
私は、何かあった時の為にスマホをカバンから取り出して、いつでも110番に連絡できるように番号だけセットすると、さらにその何かに近づいた。

「え…？！」

そして、その何かが目視で確認できるまで近づくと、私は息をのんだ。
そこに転がっていたもの、それは人だった。
間違いなく、人間がそこに倒れている。
私の恐怖心は一層強くなったが、人が倒れているとわかれば放っておくわけにもいかない。

何か事件に巻き込まれるかもしれない。

ふとそんなことも思ったが、私の体はすでにその倒れている人の目の前までやってきていた。
丁度握っていたスマホのライトアプリを使って、その人物を照らしてみた。