愛と合図【M!LK】 ① (ページ7)

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そうして、私は次の日から仕事が終わると、決まった時間に毎日彼の病室を訪ねた。
彼は相変わらず、寂しそうな顔をしてぼんやりと外を眺めているだけだったけど、私はそんなのお構いなしで、色んな話を話して聞かせた。
とはいっても、世間のニュースや会社での出来事など、他愛もない話ばかりだったけど、ちょっとでも彼の表情が変わることを願って、根気強く話し続けた。

佐野先生「今日も来てくださったんですね。ありがとうございます」

「いえ、私が勝手にやっていることですから」

佐野先生「でも、彼ね、ちょっとずつ表情が明るくなってきたんですよ」

「え？本当ですか？」

彼の病室を訪ねるようになって、一週間ほどしたころ、彼の担当の医者である佐野先生がそう言ってきた。
そうなのかな？
私にはあんまり変化が見て取れないけど…。

佐野先生「彼、あなたが来る時間になると、ちょっと嬉しそうな顔をして窓の外を見てるんですよ。そして、あなたが窓の外に見えたら恥ずかしそうに顔を膝にうずめるんです」

「え…」

何それ。
超絶可愛いんですけど…。

いや、まぁ何言ってんだ私は…。
それより、もしそれが本当なら、ちょっとずつ彼に変化が出てきたってことだよね？
いつか私にも違う表情を見せてくれる日が来るんだろうか。

佐野先生「でも、せっかく彼の心が開いてきたんですが、怪我はもう治っているので、そろそろ退院していただくことになると思います」

「え？！そ、それじゃあ…」

彼の記憶はまだ戻っていない。
このままだったら施設に入って、記憶が戻るまで過ごすことになるのか…。
施設ってどんな場所なんだろう。