41 ページ41
せっかく俺が観たいって言って借りてきてもらったこの映画。
見入っていたはずなのに、いつの間にか俺はテレビから流れる映画の事なんて、これっぽっちも頭に入ってこない。
だってAちゃんの頭が、俺の右肩にふわっと乗っかっている。
そして、気持ちよさそうな寝息が聞こえてくるのだ。
どうしよう…。
俺はこの状況の中、緊張してきて体中が熱くなって、全身変な汗が噴き出してくる。
どうしちゃったんだろ、俺…。
心臓が段々素早く脈打って、鼻息が猛スピードで荒くなってくる。
その割に、息苦しくて、もう目が回りそうだ。
なんで俺こんなに緊張してるんだ…。
胸の奥がチクチク痛い。
なんて言っていいのかわからないこの気持ち。
こんなの、記憶にない。
まぁ、ほとんどの記憶が今はないんだけど…。
それにしたって、恥ずかしいでもない、辛いでもない、嫌でもない…。
変な気分。
だけど、苦しくて、しんどい。
心を、体を落ち着かせようとしても、動いて起こすのもまずいし…。
だから俺は、この変な緊張の中、じっとAちゃんが起きてくれるのを待った。
いつの間にやらテレビに映る映画はエンドロールが流れ、やがて画面は真っ黒にブラックアウト。
Aちゃんの寝息と、俺の変な鼻息だけが、静かな部屋に響き渡る。
駄目だ、吐きそう…。
汗でぐっしょり濡れたシャツがとても心地悪い。
それでも、隣のAちゃんは、気持ちよさそうな寝息を立て続けていた。
俺は首を少しだけ動かして、その様子を伺ってみた。
Aちゃんの頭が少しだけ見える。
綺麗な少し茶色がかったその髪の毛から、シャンプーの匂いがふわっと漂ってくる。
やばい…
どんどんと変な気分になってくる。
心臓もどんどん激しく高鳴って、このままじゃ、俺、なんだか…
おかしくなっちゃうよ…
そう思って、俺は空いてるほうの左手を音を立てずにゆっくりと持ち上げて、Aちゃんの方に伸ばしていった。
もう少しでAちゃんに届く。
もう少しでAちゃんに触れる…。
Aちゃんに、触れてみたい…。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 66人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：milkssss | 作成日時：2020年2月17日 15時
