あと1センチの恋【JK】完 (ページ5)

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「イ・Aさん入られます！」

『よろしくお願いします』

ドラマの撮影も半ばに差し掛かった頃。

私はもらった台本を読んだ時から、今日が来るのが心底嫌だった。

今日の撮影はいわゆる修羅場で、私がビンタをくらうシーン。

SY「主演だからって遅れてくるとか何様？」

『たった5分でしょ』

SY「ふふっ…私今日の撮影すっごく楽しみだったの。なんでか分かる？」

『……』

SY「あんたのこと好きなだけ殴れるから」

憎たらしい顔でニヤニヤしながら言ってくるこの女は、子役時代から何かと因縁のあるソヨン。

昔から比べられることの多かった私たちだけど、
もう完全に差がついてからは相手にしないと決めた。

「それじゃあ、Aちゃんには申し訳ないけど演技だからね。
ソヨンちゃんも思いっきりよろしく」

SY「はーい！…あんた泣かないでよ？」

『お好きにどうぞ』

パンッ

「カット！ソヨンちゃん手逆だよー」

パンッ

「カット！カメラに被っちゃってる。もう一回」

パンッ

「カット！Aちゃん大丈夫！？」

SY「やだ、ごめんなさい。私引っ掻いちゃった？」

『大丈夫です。コンシーラーで隠せますから』

思った通り、いやそれ以上に最悪な1日だった。

幸いにも明日は休みだから、
こんな日は飲んでないとやってられない。

私は家に帰ってすぐさま冷蔵庫から缶ビールを取り出した。

ヒリヒリと痛む頬に冷たい缶を押し当てながらソファに座ると、

ピコン

JK〈今日飲もうよ〉

この男はなんて悪いタイミングで誘ってくるんだろうか。

グクに聞いてもらいたい愚痴はたくさんあるけど、
今日は流石にダメだ。