あと1センチの恋【JK】完 (ページ29)

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ガチャっとリビングの扉が開く音がして、慌てて片付けているふりをする。

JK「おはよ」

『…おはよ』

濡れた髪をタオルでがしがし拭きながら近づいてくるグク。

グクの全部を見てしまったら、そんな姿にすらドキッとして直視できない。

気を紛らわせるように散らばったチョコの包み紙をかき集めると、

JK「…A、話があるんだけど」

私の真後ろに立ったまま話しかけてくるグク。

そのグクの一言で、私の中のプライドがまた顔をのぞかせた。

きっと私は振られる。

私のことを振ってこの後スアとかいう女の子とデートするんだ。

それならいっそ……

『グク！』

JK「…ん？」

『…き、昨日……私たち何もなかったよね？』

JK「は？」

『…記憶飛んじゃったみたいで覚えてないんだ。服も着てたしありえないか…ははっ』

どうせ傷つくなら、全てなかったことにしてしまえばいい。

やっぱり私たちは私たちだ。

今ならまだ…

上辺だけでも元の関係に戻れるから。

後ろにいるグクの表情はわからないけど、聞こえてきた声は酷く悲しそうで、

JK「それ、本気で言ってるの？」

『あ、もしかして私なにかしちゃった？』

JK「Aっ…」

ごめんねグク。

都合よく逃げた私は最低だ。

あの女の子が誰だか素直に聞けたらよかったけど、それが特別な子だったら？

私はどうしたらいいか分からなくなる。

グクの口から〝彼女がいる〟なんて言葉聞きたくない。

しばらく押し黙っていたグクは、後ろから私の頭を優しくひとなですると、

JK「なにも、なかった…」

そう小さくつぶやいた。

グクは本当に優しいね。

その優しい嘘に涙が溢れてくる。

こんな私でごめんなさい。

どうしようもなく自分勝手で臆病な私は、心の中でただ謝ることしかできなかった。