あと1センチの恋【JK】完 (ページ11)

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11 JK side ページ11

JK「……俺眠いから切るわ」

『えっ…冗談じゃん。

…………今日のグク、かっこよかったよ』

Aが一瞬黙り込んだから何かと思えば、聞こえてきたのは俺が1番欲しかった言葉。

1番言って欲しかった人から貰うその褒め言葉は、疲れ切った俺の体を内側からじんわりと温めて癒してくれる。

JK「Aも綺麗だった…」

そうポツリと呟けばAは呆れたように、

『はいはい、ドレスがね。どうもありがとう』

なんて言うから、少しだけ声に力を入れて

JK「いや、Aが…」

『え？』

JK「今日のAすごく綺麗だった」

『……あ、ありがと。なんなの急に…

もう寝るから！おやすみ！』

JK「おやすみ…」

俺が言い終わるのと同時に切られた通話。

大人になってからは、こうやってお互いを褒め合うことも増えたけど、相変わらずぎこちないというか慣れないというか。

俺たちが素直になるのは、なかなか難しいことだから。

シーンと静まり返ったリビングは、Aの声が無くなっただけで、もの寂しさを感じる。

何か音が欲しくてテレビをつければ、たまたまやっていたのは今Aが出ているドラマの再放送だった。

大人の恋愛もの…

その名の通り見たくないシーンが本当に多すぎる。

画面の中で知らない男とキスしながらベッドに押し倒されているAは、見たこともないような〝女〟の顔をしていた。

こういうシーンを見るたびに、演技だと分かっていても嫉妬で狂いそうになる。

多分無意識に下唇を噛むくらいにはおかしくなってるんだと思う。

でも所詮俺はAの幼馴染にすぎないから。

今Aにキスしてる男が俺だったらよかったのに…

なんて、そんな情けないことしか考えられないんだ。