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第六話 フェイク ページ10






 突然だが、中島敦は窮地に陥っていた。

 依頼主である樋口の依頼は偽物(フェイク)―――つまり、嵌める為の罠だった。薄暗い路地裏の地面には、敦と一緒に依頼に着いて来た谷崎とナオミが重傷を負い、夥しい血を流して地に伏せている。



 それだけではない。敦は、国木田に遭ったら逃げろと云われていた芥川と対峙していた。

 奴等、ポートマフィアの目的は、元より人虎(あつし)只一人。谷崎とナオミは自分のせいで巻添えにされ、生きているだけで周囲の人間を損なうと芥川に虐げられる。



「敦君・・・。逃げ、ろ・・・」


 不意に谷崎の声が耳に入って、敦は探偵社で国木田に云われたことを思い出す。「貴様も今日から探偵社が一隅。社の看板を―――"汚す真似はするな"」と。

 そうだ。僕は、ずっと見捨てられ乍ら生きてきた。だけど、谷崎さんは身を挺してまで僕を逃がそうと・・・。



 次の瞬間、敦の姿が変身して行く。

 其の姿は、まるで現身に飢獣を降ろす月下の虎――――『月下獣(げっかじゅう)』。



「グオオォォォオ!!」

「『羅生門』―――叢!」


 咆哮を上げた敦は、鋭い牙を向けて芥川へ突っ込んで行く。対して芥川は、服を黒獣に変化させ向かえ撃つ―――。


 そう思った矢先、衝突仕掛けていた二人の動きが制止(・・)した。




「また会ったね、敦君。・・・今は、白虎と云うべきかな」


 突如、其処に現れたのはAだった。


 然し何故、敦が変身した瞬間に立ち会っていなかったのに、飢獣が敦だとAが判ったのか疑問が浮上する。

 其れは、川岸で敦から話を聞いた時から"既にAは敦が虎に変身する"異能力者だと気づいていた。



「ああ、君もまた会ったね」


 次にAの視線は、この状況を作った元凶、芥川に向けられた。其の儘、芥川を無言で一見していると、芥川の直ぐ後ろに血溜まりが或るのに気づく。

 其処の中心には、谷崎とナオミが倒れており、Aは哀しげに目を伏せる。








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牧高(プロフ) - 楽しく読ませていただいてます☺️続きはどのように見れば良いのでしょうか……? (5月29日 6時) (レス) id: 40bd569e74 (このIDを非表示/違反報告)
夜叉 - とても面白く読ませていただきました。 続きが気になります。  この小説好きです。 (2022年11月28日 18時) (レス) @page48 id: 6eda935019 (このIDを非表示/違反報告)
空天 馬(プロフ) - cheap sweetsさん» そう言っていただけるのが何よりも幸せです。読んでくださってありがとうございます! (2018年9月25日 17時) (レス) id: e9bd85a3ea (このIDを非表示/違反報告)
cheap sweets(プロフ) - とても面白いです。楽しく読ませていただきました。 (2018年9月25日 17時) (レス) id: e7a61814de (このIDを非表示/違反報告)
マナ - 更新お願いします! (2018年8月15日 13時) (レス) id: 7a5b092a46 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:空天 馬 | 作成日時:2016年7月13日 3時

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