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第二話 流れる人 ページ4






「見てごらん、敦君」

「どうしたの、って・・・え?」


 ふわりと果実の実る果樹の香りが鼻を抜け、ゆっくりと伸ばされたAの指先に目を引き付けられる。まるで、甘い匂いに誘引される昆虫のように誘われて目線を其処に向けると、有り得ない光景を敦は捉えた。

 なんと、川に人が流されているではないか。




「ええぇぇい!!」


 敦は咄嗟に、喚呼し乍ら川へ飛び込んだ。
 勢いよく川に飛び込んだ御蔭で水飛沫が宙を舞い、気泡となって消えていく。



「いい音だ」


 言葉をポツリと溢すとAは先程、敦が小石で地面に書いた名前を指先で上下に数回撫で、名残惜しくもその場を立ち上がった。






「あれ・・・?」

「どうかしたのかい?少年」


 川から人を助け――――否、助けた人間曰く、入水の邪魔をしたと言われた挙句、説教紛いのことをされ、まあ色々あって御飯を奢って貰えることになり、敦はAに声を掛けようと辺りを見渡した。

 然し、先程まで一緒に居たAはいつの間にかいなくなってしまっている。



 そんなキョロキョロと辺りを見渡す敦を、Aは川岸から離れた場所で見届けると、一歩、また一歩と足を歩ませ乍ら唇を綻ばせた。

 ()とはまた遇える気がしてならない。敦を川岸で見かけたのが必然的なものだったとして、川を漂泊する人が運命を知らせる前兆為らば、運は味方してくれた。



 ――――運命(フェイト)。少しは信じてみるのもいいかもしれない。




「また会おう。敦君」








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牧高(プロフ) - 楽しく読ませていただいてます☺️続きはどのように見れば良いのでしょうか……? (5月29日 6時) (レス) id: 40bd569e74 (このIDを非表示/違反報告)
夜叉 - とても面白く読ませていただきました。 続きが気になります。  この小説好きです。 (2022年11月28日 18時) (レス) @page48 id: 6eda935019 (このIDを非表示/違反報告)
空天 馬(プロフ) - cheap sweetsさん» そう言っていただけるのが何よりも幸せです。読んでくださってありがとうございます! (2018年9月25日 17時) (レス) id: e9bd85a3ea (このIDを非表示/違反報告)
cheap sweets(プロフ) - とても面白いです。楽しく読ませていただきました。 (2018年9月25日 17時) (レス) id: e7a61814de (このIDを非表示/違反報告)
マナ - 更新お願いします! (2018年8月15日 13時) (レス) id: 7a5b092a46 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:空天 馬 | 作成日時:2016年7月13日 3時

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