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三の蛇 ページ4

《Aside》


「いや、なんともねーって」

そのまま両手を上げる少年に、八田原(やだわら)Aは困惑していた。

全身の模様も薄くなり段々と消えつつあるし、明らかに口調が宿儺と違う。これでは呪い(宿儺)なのか人間なのか判断がつかない。

だが、宿儺が演技をし、油断したところで殺そうとするということも考えられる。

疑わしきは罰せよ、と言えるほどAは非情ではなかったが、疑わずにはいられないほどの状況ではあった。


「それより俺も伏黒もボロボロじゃん、はやく病院いこうぜ」

両手を上げ続けたままなんてことなしに言う、珊瑚色の髪の少年。

それでも、黒髪の少年(伏黒、と呼ばれていた)は顔をしかめて黙りこくったまま。


そして、更に困惑することがもうひとつ。

「今どういう状況?」

伏黒とやらの後ろに、目隠しをした白髪の長身不審者が現れたのである。ただ目隠しに関してはAも人のこと言えない。



「なっ……五条先生!どうしてここに」


「や。

来る気なかったんだけどさ、さすがに特級呪物が行方不明となると上が五月蝿くてね。

観光がてらはせ参じたってわけ」


いやーボロボロだね、2年の皆に見せよっとと言いつつスマホで黒髪少年をパシャリ。黒髪少年の額には青筋がたっていた。

心底同情する。先生、と呼ばれていたところからしてこの不審者は黒髪少年の教師だろうが、こんなのが教師だなんて大変だろう。

少なくとも私なら三日で発狂しかけると思う。

そんな他人事のように(実際、この時点ではまだ他人事だった。この時点では)考えていると、更に不審者が問いを重ねる。

「で、見つかった?」

黙りこくる黒髪少年の横で、もう一人の少年が気まずそうに手を挙げた。

そして、もう片方の手で自分を指差し、




「ごめん、俺それ食べちゃった」

という爆弾発言をぶっ放したのである。

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作者名:マザーグース | 作者ホームページ:   
作成日時:2020年12月2日 14時

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