悪役令嬢なんかじゃない！【nqrse】

38. ページ38

.



そして期末試験は無事終わった。いや、成績は無事じゃないかもしれないけど。

まぁ、多分大丈夫だと思う。成績優秀者の名は伊達じゃないんだ。

それに、先輩にあんなに数学を教えて頂いたのに赤点でした〜とかだったらもう顔向けが出来ない…切腹しなきゃじゃん……(絶望)

沙良は飄々とした顔で「簡単だったわね」とか言ってた。腹が立った。そんな優秀なのはなんなの？？？


そして今は学校帰り。いつかの素敵な喫茶店で、沙良はコーヒー、私はアイスティーをチーズケーキと共に頂いている。いつ来ても美味しい。


「(5)ってy＝5でよかった？」

「多分そうだと思うわ。」

問題用紙を片手に答え合わせ。アイスティーをすすり、フォークに手を伸ばしたそのとき。



かららん、ころろん。


店のドアにつけられたベルが軽い音を立てる。二人とも反射的にドアの方を向いた。

ボブカットのピンク色の髪の毛に低い声。黒縁のメガネは今日はしていない。ピンクベージュの萌え袖カーディガンはいつも通りだ。

「だからさぁ、本当に……あれ、Aちゃんと落合さんじゃん」

「なるせ先輩！…と、相川先輩？」

「いや、二人とも興味の有無が分かりやすすぎ」

沙良が呆れたように呟く横だが、私の視線はなるせ先輩にしか向いていない。

しかし、小柄ななるせ先輩の後ろからぴょこんと白い頭が覗いている。うさぎみたいな赤い目が、じっとこちらを見ていた。

じーっと凝視されているので負けじと頑張って見つめ返すけれど、自分よりかなり大きい男の人からガン見されるというのは中々に怖いものがある。ぷるぷると震えそうな唇を噛み締め、沙良のセーラー服の裾をテーブルの下でぎゅっと掴んだ。

それに気付いて、沙良が私の手の上に自分の白くて華奢なひんやりとした手を重ねる。

「そ、その……お久しぶりです」

「うん」

勇気を振り絞って挨拶したが、すっと目を逸らされて背中に引っ込んでいってしまった。

「ごめんね、まふくん人見知りでさ…」

「ひ、人見知り！？」


私にあんな威嚇してた人が！？

初対面の後輩に威嚇してた人が！？

人見知り！？！？

「驚きすぎじゃん」

けらけらと笑うなるせ先輩。その間にも、すっと私達の近くのテーブルに座る。

「あ、オレなんにしよっかな。まふくんは？」

「決めてない。」

和やかに笑い合う先輩達にすっかり毒気を抜かれて、私は沙良と顔を見合わせた。

39.→←37.

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す