悪役令嬢なんかじゃない！【nqrse】

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来てほしくもない時期がまた今年もやってきた。

そう、学生の一番の天敵と言っても過言ではないもの。




それすなわち、定期テストである。


皆「あぁ〜」とか「うぅ〜」とか唸りながら嫌々勉強する時期だ。例に漏れず、私も図書室の奥で、本ではなく教科書とノートを広げていた。

いわゆる進学校と呼ばれる部類のこの学校は、成績にとても厳しい。

成績がよければ基本放任主義で、相当な問題を起こさない限り何も言われないが、成績が悪い生徒ともなるとそうはいかない。


既に学年で数人しかいないブレザー(男子制服)着用の女子生徒として、そして何より「図書室の悪役令嬢」として目立っている私としては、これ以上目をつけられることは出来るだけ避けたかった。


私の成績は断じて悪い方ではない。学年で総合20位以内には絶対に入るし、平均点を割ったことは一度もない。

しかし、今までないからと言って油断すると今度は赤点が待っているのがこの学校のテストである。

大嫌いな数学の教科書に目を向け、広げたノートにシャーペンを走らせる。

提出するわけでもないし、自分が読めればいいや、という思考の元書かれた字はお世辞にも綺麗とは言えない。


「実数の2乗は0以上になるはずだから、そうするとここのx(エックス)には………」


「あ、久留々木さんやっほー」

「ぴぎゃあっ！？！？！？！？」

背後から突然かけられた低い声に肩が跳ねる。それと同時に意図せずに口から間抜けな声が出て、せめて女子なんだから「きゃっ！？」とかじゃないのか…と自分の女子力のなさに落ち込んだ。


「あ、期末対策？」

私の肩口から、乱雑に証明の書かれたノートと教科書を見て楽しそうに笑う先輩。
何が楽しいのかは私にはさっぱりだけれど。

「はい、数学苦手で………英語か国語だったら大学入試範囲くらいまでは出来るんですけど」

「それ相当すごくない？？？」

今年大学受験生の俺からしたら脳交換して欲しいんだけど、とまた笑う先輩。

先輩も頭いいって話だけどなぁ。


「おれ今年のテストの成績、内申点にすげえ響くからさ〜………テストやりたくねー」

ぐでぇ、と椅子に座って机に突っ伏して溶ける先輩。心なしか喋り方がひらがなで可愛い。

そうか、そういえば先輩って3年生だから、今年大学受験生なのか。

「あ、そだ」

机に腕を伸ばして突っ伏した姿勢から、頭だけ上げて目の前の私を見る。


「おれ、勉強教えてあげよっか？」

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