19. ページ19
.
そこからまた数日の間が空いて、図書室に現れた先輩は真剣そのものという顔。
「久留々木さん」
「はい…？」
先輩がさも深刻そうに下唇を噛んでいるとのだから、何があったのかとこちらも緊張してしまう。
ゴクリと唾を飲み込み、先輩の唇から出るはずの次の言葉を待っていると。
「おすすめの本、ない！？」
「え？」
間抜けな声が、私の唇からころりと転がり落ちた。
♡♡♡
「………つまり、現代文の時間にあるおすすめの本紹介を乗りきるための本が欲しいと？」
「うん、そういうこと」
いつものそれぞれの椅子に座っている私と先輩。私は相変わらず膝の上に本を置いたままだが、先輩は一人用のミニテーブルに両肘を置き、組んだ手の上にアゴを乗せるようなポーズでため息をついていた。
「平常点にだいぶ入るらしいんだけど、俺普段あんま本読まないんだよね…久留々木さんならなんか知ってるかもって思ってさ」
高校3年生、すなわち大学受験生である先輩にとって成績は大事なものだろう。それで、真っ先に考えついたのが私だったと。
「まあ、知らないことはないですね。本は友達、人間は他人、がモットーですので。
私にお手伝いが出来ることであればさせて頂きます」
「マジ！？うわ久留々木さん神じゃん……！」
「人間ですね私は」
軽口を返しながら膝の上から本をどけ、立ち上がって椅子の上に置く。
そのまま適当に近くの棚に歩み寄り、目星をつけた本を適当に引っ張り出す。
「これとこれ…でもやっぱりこれはいいかな。
あ、先輩そこのオレンジ色の表紙の取ってください」
「これ？」
「そうです」
右手で自動的に本を取りつつ、左手に本の山を形成していく。
20冊ほど取ったところでそれをドサッと壁沿いに置いてあった数人座れるような長椅子に置き、ついでに先輩からも指示した本を受け取る。どれも一般的には名作と呼ばれる類いだ。
先生ウケがよさそうなのはどれか、紹介文が書きやすそうなのはどれかと選別していく。
「先輩はどんな本が好きとかありますか？」
「え？あ、えーっと、特にない…」
なら恋愛系とかは苦手そうだし外しておこう、と棚に戻す山の方に置き、中世ヨーロッパの貴族に関する事前知識がないと内容が分かりにくいものも同じ山へ。
最終的に3、4冊にまで減った本を先輩に渡し、その中から選んでもらうことにした。
数日後満足そうにお礼を言ってくれたので、多分お眼鏡に叶ったんだと思う。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 382人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ちょこ２（パソコン変わりました≪元ID ５ad0b4ef6a≫）） - 更新が止まってます!戻ってきてください！続き楽しみにまってます！(´;ω;｀) (6月21日 18時) (
レス) @page44 id: c7ac99c812 (このIDを非表示/違反報告)
マザーグース(プロフ) - まねきねこさん» コメントありがとうございます！！！かわいいきゅんきゅんするような恋愛を目指してます…！これからもこの作品をよろしくお願いします！！ (2021年9月13日 20時) (レス) id: 446891bd7a (このIDを非表示/違反報告)
まねきねこ(プロフ) - ぐ、っは。可愛いいいい。なるせちゃあああ"あ"あ"((最高ですーー！ (2021年9月13日 20時) (レス) id: 35836646c0 (このIDを非表示/違反報告)
マザーグース(プロフ) - qh─ヘラオさん» 初コメありがとうございます！そうです、あの天使さんです！！！好きすぎるだなんて……照れちゃいまs((( これからもこの作品をよろしくお願いします！ (2021年8月9日 21時) (レス) id: 446891bd7a (このIDを非表示/違反報告)
qh─ヘラオ - わわわ！！！あの天使さんが！あの天使さんがぁ！ん"ん"ん"ん"ん"ん"ん"好きすぎるｩｩｩ(((初コメ失礼します*_ _) (2021年8月9日 21時) (レス) id: 946dd152aa (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：マザーグース | 作者ホームページ：
作成日時：2021年5月24日 19時
