悪役令嬢なんかじゃない！【nqrse】

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「この子体調悪いらしくて…ごめんなさい、もう行かせていただきますね」

「あわっ、さっ、沙良！？」

「ほら行くよ、A」


ぐいっと強く手を引かれて、戸惑いつつも先輩たちに会釈をしてその場を後にした。






「ねえ沙良……沙良！沙良ったら！ねえ！！」

「なぁに？」

引っ張られて数十m、何回問いかけてもうんともすんとも言わないどころか振り返りすらしない沙良。

しびれを切らして呼びかけると、やっとこちらを振り向いた。



「なんで私のこと引っ張って帰っちゃうのよ！」

「Aの顔色が悪かったからよ。

全く、モテるらしいけどあの人たちも女の子の顔色が悪いのすらろくに気づかないなんて…ダメねぇ」

「いや私がうつむいてたからだろうけど」


そこまでボロクソに言われると先輩たちがさすがに可哀想だよ。

それでもよ、と沙良が肩をすくめる。




……………沙良に彼氏が出来ても長続きしない理由ってもしかしてこれ？

「でも沙良、ホントに先輩たち悪くないからね？」




「あら、やけにあの人たちのこと庇うわね。

どうして？」

念を押すように、少し前にいた沙良──まあせいぜい数歩分なのだが──の横に並び立ち、首を伸ばして顔をのぞきこむ。

すると、頬に手を当てて、小指だけは唇の横に置いたまま悪い笑みというなんとも悪役じみたポーズをとられた。

いや、無気力系ヒロインみたいな美少女顔しときながらその顔はヤバいよ…

「ど、どうしてって…」

そりゃ、先輩たちが悪くないからに決まってるじゃんか。


そう言うより前に、真っ赤な唇が開かれる。

「そうだなぁ、成瀬先輩のことが好きとか？」


「はｯ…………！？！？！？」


自分の顔がぼぼぼんっと赤く染まるのが分かる。

沙良の笑みで冗談だと分かってはいても、さすがにこれは真っ赤になっちゃうと思うのだ。

「な、なわけないじゃん！！」

「あらそう？」

「そういうとこだよ悪役令嬢！！！」


性格だったら私より悪役してるんじゃないかな、この人。



♡♡♡

お気に入り登録者112人ありがとうございます……！(2021.6.17.21:25)

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