悪役令嬢なんかじゃない！【nqrse】

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「さ、沙良………？」

恐る恐る様子を伺うと、沙良は綺麗にニッコリと微笑んだ。沙良の表情筋が無気力状態から動くのは大変珍しく、親友としてここは私も素直に喜びたい。まあそれも背景が雪山になってなけれはの話だったんだけど。

その表情に浮かんでいるのは明らかな敵意。


「こんにちは先輩、初めまして。

落合沙良と申します、以後お見知りおきを」


バッチバチの敵意を向けつつ、それでも笑顔で上品に礼をする沙良。先輩は戸惑いつつもそれに返し、他の二人は面白そうな、それでいて心配そうな表情でそれを見つめている。

「よ、よろしく…

てかあれ、落合さんって確か文化祭でドレスのモデルやってる人だよね？」

「ええそうです、家庭科同好会のドレスのモデルをやらせて頂いています」


家庭科同好会では、文化祭での展示用にドレスを毎年数着作る。そして、展示するだけではなく、毎年演劇部の外部劇での衣装として使ったり、最後の絶叫告白の前にファッションショーのように披露したりするのだ。


ついでに言うと、この高校は文化祭の時のみならず普段から部活活動がとても盛んである。

演劇部の外部劇とは、演劇部員だけではなく、演劇部ではない人を臨時でスカウトして劇に出す。スカウトする人物は容姿や声から演劇部員が決めるらしいが、クオリティが高いので毎年盛り上がる出し物のひとつだ。




そして絶叫告白。こちらは読んで字のごとく誰かに何かを告白するというイベントで、正式名称は絶叫告白&主張。

マイクもなしにだだっ広いグラウンドに設置された台の上に立ち、大声で思いきり叫ぶのだ。

ここでいくつのカップルが成立したことだろうか、何人が泣いたことだろうか。

ここで結ばれたカップルは絶対に別れないというジンクスもあるらしく、毎年の文化祭の目玉的出し物である。いや去年絶叫告白でくっついたカップル別れてたけどね。

しょせんジンクスはジンクスなのである。

だがモテる人には「告白するだけでも！」とか「ワンチャンあるかもしれないから！」と告白が殺到する。

その例に漏れず美人でモテる沙良は去年おびただしい量の告白をされていて、隣にいた私が沙良すご…………とドン引いていたのは記憶に新しかったりした。

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