1話 ページ1
「アジーム様の馬車が通るぞ！道を開けろ！」
往来から聞こえてきた怒鳴り声に、またかとため息をついて子供達を脇に寄せる。
貴族や商人は嫌いだ。
贅沢の限りを尽くした生活をしながら、私達貧乏人を省みてもくれないような奴ら。
「ねーねーおねーちゃん、なんであたしたちがよけなきゃいけないの？あとにきたほうがよけるんでしょ？」
この路地裏で、親もおらず助け合って暮らしている子供達の中で一番幼いアーヤが、抱きすくめた腕の中から不思議そうにこちらを見上げる。
褐色の肌の中、アーモンドの形をした黒いくりくりした瞳の中に私が映っているのが見えた。
そうだよな、その通りだよな。
そう言いたい衝動をぐっと抑えた。こんな小さい子に、そんな汚い嫉妬や怒りの感情などぶつけてはいけない。
「あの人達はね、お姉ちゃん達よりずーっとずーっと偉いんだよ。
だから、私達が避けなきゃいけないんだって」
ふーん、と不思議そうに唇を尖らせたアーヤだったが、幼子特有の移り気ですぐに白い蝶を目で追いかけ始めた。
「やあ、Aちゃん。
また子守りをしてるのかい？」
と、隣で水煙草を吹かしているおじさん。
このおじさんは路地裏スラムの情報屋。耳が早くて何でも知っているから、今日はどこに残飯が多く捨てられてるよとか色々教えてもらってる。
熱砂の国は気温が高いから、残飯なんかはすぐ腐る。だから早く回収に行かなきゃいけない。
私がこの路地裏で一番動ける、言うならば「活きのいい」若手だから、子供達のリーダーは必然的に私みたいになってる。
だから、私はたくさんのご飯を用意しなくちゃ、って自分では思ってる。
アーヤなんかみたいな小さい子はご飯の調達なんて無理だし。
おじさんに話しかけられて、答えようと腕の力が緩んだその時。
するり、と腕の間から何かが抜ける感覚があった。
「あっ、アーヤ！」
抜け出したのは今ちょうど考えていたアーヤ。先程目で追いかけていた白い蝶を目指して、おぼつかない足取りながらとてとてと走っていく。
そして、その蝶は今アジームの馬車の前を飛んでいて。
「アーヤ！！」
腕を子供達からほどいてだっと駆け出す。
いい子達だから、きっとそのまま待っていてくれるはずだ。
アーヤと私が馬車の前に駆け出したのを見て、御者が慌てたように手綱を切る。
そして………
キィィィ──────ッッ！！！
耳障りな音と共に、アーヤを抱いて庇った私の前で馬車は急停車した。
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マザーグース(プロフ) - ルイさん» 嬉しいです………頑張りますね！ (2021年3月27日 12時) (
レス) id: 446891bd7a (このIDを非表示/違反報告)
ルイ - うわぁぁぁぁめっちゃ好きです！更新頑張ってください!! (2021年3月27日 3時) (レス) id: 719e5dac86 (このIDを非表示/違反報告)
マザーグース(プロフ) - 碧生さん» ありがとうございます！！更新頑張りますね！！ (2021年3月19日 15時) (レス) id: 446891bd7a (このIDを非表示/違反報告)
碧生(プロフ) - 凄く面白いです！更新待ってます！ (2021年3月19日 9時) (レス) id: 7ffc4172b1 (このIDを非表示/違反報告)
マザーグース(プロフ) - ドさん» ありがとうございます。リアルが多忙なため遅くなっておりますが、じきに受験が終わるので更新ペースが上がります。ですので、これからもよろしくお願いします！ (2021年1月28日 12時) (レス) id: 446891bd7a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：マザーグース | 作者ホームページ：
作成日時：2021年1月3日 21時
