慧星に響く歌声は7【オリオンの刻印】 (ページ10)

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ー本背負いページ10

しの)ねっ、歌おうよ

A)…ここで?

しの)【トリコロージュ】ね、サンハイッ!

Aが承知する前に強引に決めるしの。

目尻を下げ困ったように微笑むAだが、しのの合図と共に小さな声で歌い出す。

【～～～～♪】

波の音と共に美しい歌声が海へと捧げられる。

途中、冗談半分でAに手を差し伸べるとクスリと笑いながらも手を重ねてくれた。

しの)(っあーあ、このままで……)

ワルツを踊っているかのようにくるくると回り出す2人。

しの)(っ…このままでいられるかなぁ……)

…自分が選んだ道が正しいのか、しのには分からなかった。

まだ後戻りは出来る、だがそうして残ったものは一体なんだ?

答えのない疑問ばかりが胸にぎゅうぎゅうに詰まっていた。

…やがて歌も終わり、波の音が耳に響く。

「喉が渇いちゃった」とAがポツリと呟く。

するとしのは「飲み物を取ってくる!」と飲み物の所へと勢いよく走って行った。

そんなしのの後ろ姿を見つめながら、ふぅ…と深呼吸。

A)(…結局深くは聞けなかったな……どうすれば支えになれるんだろう)

…Aもしのが誤魔化しているのは何となく分かっていた。

だがそれを”自分が”深く追求していいのか、分からなかった。

A)(…私としのちゃんも、血が繋がってたらお互い遠慮なく言い合ったり出来たのかな)

…姉妹の仲にはいつも1枚の厚い壁があるのをAは沸々と感じていた。

どうしたらいいものか、と頭を悩ませていたその時。

…Aの肩に誰かが手を置いた。

A)!?

ヒュッと息を飲み込むAの背中に冷や汗が伝った。

…まさか本当にオリオンの人ではなかろうかと。

Aは覚悟を決めると同時に。

A)っ!

相手の手を引き寄せ腕を掴み、相手を背負い投げた。

…火事場の馬鹿力とでも言うのだろうか。

その見た目からは考えられぬ行動をしたのだ。

ドサッと人が倒れる音が聞こえると勢いよく振り返る。

そこには。

…今まで姿の見えなかったルーサー達だった。

A)…えっ?

ベルガモ)ル、ルーサー!

倒れ込んでいるルーサーに駆け寄るベルガモとアロソン。

…どうやらAが背負投げた人物はルーサーだったようだ。

ルーサー)ッ～～!…何しやがんだ!?

…怒るのも当然だ。

なにしろいきなり背負投などされたのだから。

Aは自分のしでかした重大さにやっと理解し、紙のように顔を真っ青にしながら口をぱくぱくと動かす。

A)す、すすす、すっ……すみませんでしたああぁ!!

…船にAの謝罪が響き渡ったのは言うまでもないだろう。