慧星に響く歌声は7【オリオンの刻印】 (ページ50)

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一抹の不安ページ50

A)美味しい?

不動)まあまあだな

口ではそう言っているが食べるのを止めていないところを見ると、美味しいという事なのだろう。

心做しか先程よりかは機嫌が良くなったようにも見える。

A)口合うなら良かった……これ、タツヤとヒロトくんに渡してくれるかな?

不動)なんで俺が…

紙袋から2つのラッピング袋を不動に差し出すと、面倒そうにも受け取りはしてくれる不動。

A)(…なんやかんや言って不動くんも優しいもんね)

A)あっ、あともう1つ

不動)なんだよ

しっかりと被り物を被るように整えていたAは思い出したかのようにもう1つ、紙袋からラッピング袋を取り出す。

A)剛陣くんにも渡しておいて欲しいな、お願いね

不動)へーへー

まるで犬をあしらうように手を払う不動の態度に、Aは眉を八の字に寄せながらも席を立つ。

A)それじゃあ…お願い聞いてくれてありがとう

不動に向けて数回手を振るとAは反対側に座る岩戸と坂野上の方へと向く。

タツヤ)A……ってあれ?

タツヤはヒロトを一通り落ち着かせるとAの方へと振り向く。

だが、そこにすでにAは居なかった。

タツヤ)あの、不動さん…Aは何処に

不動)あ?…あそこに居んだろ

面倒くさそうに首を後ろにくいっ、と逸らす不動。

タツヤは不動の逸らした方へと首を後ろに捻らせる。

見ると、Aが坂野上と岩戸と楽しそうに話している姿が。

タツヤ)(いつの間にあんな所に…)

不動)それとほらよ

タツヤ)…ドーナツ?

ぶっきらぼうに渡された2つのラッピング袋を見ると、一口サイズのドーナツが。

…誰からなのか言われなくても分かる。

Aからだろう、とタツヤはすぐに理解した。

タツヤ)…わざわざありがとうございます、不動さん

タツヤがお礼を言うのと同時に不動は再び目を瞑る。

何処か嬉しげにも見えるが…恐らくこれ以上は話しかけるな、という事だろう。

なんとなく察したタツヤは不動に背を向ける。

そして、未だに小刻みに震えているヒロトに受け取った内の1つを渡す。

タツヤ)ほらヒロト

ヒロト)なっ、なな、何だよッ?!

タツヤ)Aからだぞ、後でお礼言わないとな

ヒロトは挙動不審にもラッピング袋を受け取ると恐る恐る首を動かす。

その動かしぶりを見る限りAに今の姿を見られていないか、気にしているようだ。

タツヤ)(…見られていたって言うのは辞めておくか)

タツヤ自身確認した訳ではないが、きっと見られていただろうと考える。

タツヤ)(Aが余計なこと言わなければ何もなく済むけど…)

一抹の不安を抱えるタツヤ。

果たしてどうなるのだろうか…。