可愛い渾名 ページ49
A)(さてと、治たちの席には渡したから次は…)
座席の反対側に回り込むと円堂の1個後ろの席へと目を向ける。
ただ目を瞑っているのか、それとも眠っているのか分からない不動。
その横でヒロトの顔を覗き込んでいるタツヤ。
そして、なにやらピンと腕を伸ばして両膝に乗せているヒロトの姿が。
A)(…何してるんだろう)
不思議に思いしばらく見つめているとタツヤと目が合う。
次の瞬間、Aは目を疑った。
A)えっ
…あのヒロトがタツヤの首元に腕を回して抱きついる。
そのなんとも異様な光景にAは目をぱちくりと瞬かせる。
A)(…どうしたんだろうヒロトくん、酔っちゃったのかな…?)
酔ったせいであんな体制になるのかはさておき、少なくとも今は話せるような状態ではないであろう。
そう判断したAは不動に声を掛けることに。
A)不動くん
不動)……………
A)(…寝てるのかな)
剛陣も席を立っていて丁度その席は空いている。
Aは剛陣の席にちょこん、と座る。
するとつんつん、と不動の頬を人差し指で軽く突いて本当に寝ているのか確認をする。
…確認するにしてももっと他に手はあると思うが。
すると不動の眉がぴくぴくと痙攣する。
その反応を見たAは狸寝入りだと判断。
するとなにやら思い付いたように、体をできるだけ縮こませると被り物から顔を覗かせる。
口を隠すように手を当てると、そーっと不動の耳元に近付くと耳打ちを。
A)……アッキー…っいひゃいッ!?
ほんの出来心で、何時しか呼んだ"可愛い渾名"で不動を読んでみる。
不動)誰がアッキーだ
伏せていた目をゆっくり開けながら不動はAの右頬を片手で思いっきり抓る。
A)ごっ、ごごめゆごめゆなひゃ、ふろぉうくんッ!
何時しかしたやり取りに不動は横目をするりと移動させると、深いため息と共にAの頬からぱっと指を離した。
A)いたた……起きてるなら返事してよぉ…
不動)それで?何の用だよ
被り物の中から頬をさすりながら情けない声を漏らすAに不動は面倒くさそうに目だけを向ける。
その様子を見る限り不機嫌そうにも見える。
それもそうであろう。
Aにからかわれる前、ただでさえ剛陣に肩枕されていたのだから…。
A)…お菓子作ってきたから皆に配ってるんだ、不動くんも良かったら
頬杖をついて頭を支えていた不動はAから少し面倒くさそうに空いた手で袋を受け取る。
Aの手作りと聞いて、ちょうど小腹が空いていた不動はラッピングを解くと袋の中に手を突っ込む。
そしてドーナツをぽいっと口の中に放り込んだ。
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作者名：39 | 作成日時：2023年8月13日 17時
