あなたのせい ※ ページ41
A)わざわざありがとう…結局、家まで送ってもらっちゃったね
途中、「ここまででいい!」と何度もせがんだが野坂の無言の圧に負けてしまったという…。
野坂)僕ははなからそのつもりだったから気にしないで
そう言ってくれる野坂だったがAは申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
A)今度、改めてお礼するね
野坂)お礼…それなら今貰おうか
A)えっ…?
目を丸めると同時にふわり、と抱きしめられて野坂の胸板に倒れ込む。
A)の、野坂くん…?
冷や汗が流れつつも、心地よい風も相まって野坂の温かくて優しい温もりがAに伝わる。
A)(野坂くんハグするの好きなのかな…)
なんて考えているのも束の間、野坂が愛おしそうにAの頬を撫で距離を縮めようとした。
その行動に既視感を感じていたAは頬が熱くなり、野坂の胸板に添えていた手に力を入れる。
が、やはり男女の力の差に適うはずもなくその行動は無意味と化す。
A)っ…!
近づいてくる野坂の顔に、反射的にぎゅぅっと目を瞑る。
今更ながら身体がこわばっているのが自分でも分かった。
A)…?
…しかし何も起きない。
自分の勘違いかと恐る恐る目を開くと野坂が覗き込むように見つめていたのだ。
A)……?…?
状況がのみ呑めないAは周りに？を浮かべる。
そんなAが面白いのかおかしいのか、意地が悪そうにほくそ笑む野坂。
野坂)もしかして期待してた?
A)き、た…い……
期待という言葉をたどたどしくオウム返しするAは、かあぁっと顔をより赤く染める。
A)ちがっ!っ〜〜〜!
言葉にならない感情にAは顔から湯気がでそうになり、野坂の胸板をぽかぽかと叩く。
Aにとっては精一杯の否定でも、その行動すらも野坂にとって愛おしいものになる。
野坂)顔、林檎みたいに真っ赤だね
野坂の端正な指が頬を優しく這っていた。
A)あっ、あなたのせいで…!〜〜っ!しのちゃん呼ぶよ?!
野坂)それは困るな…じゃあ今日はこれだけ
そう言うと同時に野坂はAの結ばれた髪を優しく掬うと、まるで壊れ物を扱うかのようにそっと唇を押しつける。
野坂)…お礼も貰えたことだし僕も帰ろうかな、おやすみAちゃん
A)おや、す…み……?
覚束無いAの言葉に野坂は満足気に微笑むと背を向ける。
当のAは何が起こったのか状況を呑み込めず、しばらくその場に佇んでいた。
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作者名：39 | 作成日時：2023年8月13日 17時
