君のせい ページ40
野坂)認められた…?
A)認められた…というか、初めて"初音A"として見ないで接してくれた人が居てね
野坂)……それって円堂さん?
A)よく分かったね…!うん、円堂くんが初めてだったんだ…私の事普通の人として接してくれたのは
そう語るAの目は活気に満ちていた。
A)今ではトップアイドルなんて言われて"初音"の名を背負ってるけどね、本当は普通に暮らしたかったな…なんて思ったり
悲しげに目を伏せるAに、野坂は何と声を掛ければいいのか分からず黙ってしまう。
A)でもね、この道を進んで良かったなって思ってるよ…野坂くんとも出会えたしね
野坂)…僕と?
野坂が首を傾げると同時に心地よい風が頬を撫でる感覚が伝う。
A)うん!だってこの道を選んでなかったら、こうやって野坂くんと冗談を言い合ったりなんて出来なかっただろうし…何より、野坂くんと一緒に居られて嬉しい!
先程から背を向けて話していたAが此方を振り向いた途端、結ばれた髪が軽く揺れる。
Aの真っ直ぐな言葉と満面の笑みに野坂は胸が弾む。
そして、ひしひしと感じたのだ。
野坂)(…やっぱり僕は君の事が…)
…Aの事が好きなんだ、と。
野坂)(……前々から分かっていた事ではあるけど、改めて考えると恥ずかしくなるな…)
野坂は赤くなっているであろう頬を隠すように目を逸らした。
A)…野坂くん、大丈夫?具合悪いの?
野坂)…君のせいなんだけどな
A)えっ…!?私何かしたっけ…
…当の本人はやはり無自覚だったようだ。
顎に手を当て小首を傾げたまま「うーん…」と唸るAに野坂は小さく微笑む。
A)ともかくそろそろ帰ろっか、もう11時回ってるし…このまま悪化でもしたら良くないよ
帰宅の案を出してくるAに野坂はこの時間を終わらせたくないと思ってしまう。
あと1日過ぎれば再びAに会えるとはいえ、彼女は仲間からも人気を集めている。
例え会えたとしても、こうして2人っきりで話す事は滅多にない機会なのだ。
だが時間も時間という事もあり渋々承諾する。
野坂)そうだね…家まで送るよ
A)えっいいよ…ここから数分で着くから
野坂)女の子を1人で帰すわけにはいかないよ
A)…ここまで1人で来れたから大丈b
野坂)こっちから来たよね、行こうか
A)ちょっ…ちょっと!
半ば強引にAの手を引き歩き出す野坂。
…こうなれば止められないであろうと悟ったAは大人しく送ってもらうことにしたのだった。
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作者名：39 | 作成日時：2023年8月13日 17時
