盗み聞き ページ39
A)本当に良かったよ…!実はミーティングルームに集まった時、灰崎くんと話しているの聞こえててね
野坂)へぇ…盗み聞きなんていい趣味だね
A)ぬっ、盗み聞きだなんて…!
「盗み聞き」という言葉にAは否定の意味を込めて、ハエでも追い払うように顔の前で両手をひらひらさせる。
A)私はただ心配で…!もし帰る学校がないなら雷門にでも来れるよう校長先生にでも話を…!
…Aにそんな事が出来るかは置いておいて、野坂が心配だったということだけはよく伝わる。
そんなAの姿に野坂は僅かに微笑む。
野坂)僕の事心配してくれてたんだ…嬉しいよ
A)(…野坂くん相手だと調子狂うな…)
本音なのか冗談なのか分からない野坂の言葉にAは俯き加減に視線を逸らす。
野坂)…それにしてもよく迷わずに来れたね
A)…私を何だと思ってるの?
野坂)見知った場所でもすぐに迷う子
野坂の言葉にぐうの音も出ないAは、眉に深い皺を寄せ口をへの字に曲げる。
A)…ここではよく円堂くん達と特訓してたからここは迷わずに来れるのッ!
野坂)円堂さん達…?
少し怒りの籠った声でそう告げると、ほんの微かだったが不意をつかれたような顔をする野坂。
A)うん、こっち来て
Aはベンチから勢いよく立ち上がると座っている野坂の手を両手で掴み、少し離れた場に生えていた木に近づく。
A)ここでは円堂くんがタイヤを吊るしてボールを受け止める特訓をしてたんだ!それとそれと……
今度は階段を登り鉄塔へと近付くと、鉄塔に掛かった梯子を指差す。
A)こっちの梯子では豪炎寺くんが木の棒を吊るしてジャンプの練習をしたり……知ってるかな?"イナズマ落とし!"
野坂)ああ…確か野生中との試合で使っていた技だよね
A)よく知ってるね!壁山くん…後輩がね、高所恐怖症で中々上手く出来なかった技なんだけど……
野坂)…楽しそうだね、Aちゃん
A)えっ?そ、そうかな…
野坂)うん、凄く活き活きとしてるよ
本人は自覚していないが野坂が言う通り、今のAは何時にも無く流暢に話している。
こんなAの姿は珍しいのか、野坂も関心気味だ。
A)1年前のFFの事思い出しちゃって…あの頃はすっごく熱くなってたなぁ
「あっ、別に今のFFIを怠けてるわけじゃないよ?!」と慌てて付け足すAに、野坂は目を細める。
野坂)Aちゃんは本当に元の雷門が好きなんだね
A)…うん、勿論今の雷門も好きだよ?でも私にとって初めて認められた居場所なんだ
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作者名：39 | 作成日時：2023年8月13日 17時
