現在の王帝月ノ宮 ページ38
家を出て数分、鉄塔広場へと辿り着いたAは野坂が居ないか首をあちこちに振り回す。
ふと、遠くに人影が見えた。
じぃっと目を凝らして見るとその人影はピンク色の髪をしている。
A)居た……野坂くん…!
やっと見つけられたことに安堵の笑みを浮かべながらAは野坂の元へ駆け寄る。
野坂)…本当に来たんだ
A)えっ
野坂の傍に来た途端、放たれた予想外の言葉にAは進めていた足を止めた。
A)えっ…?の、野坂くんが来いって言ったんだよ?
野坂)てっきりしのちゃんに止められると思っていたから…まさか本当に来るとはね
相変わらず無表情の野坂だが、その様子からは何処か嬉しそうに聞こえる。
当のAは突然呼び出され、挙句に「来るとは思わなかった」など言われ不満気に片頬を膨らます。
A)早足で来て損した……その座り方危ないよ?ほら、ちゃんとベンチに座る!
Aはベンチの手前にある手すりに座っている野坂に、隣に座るように促すようにベンチを軽く叩く。
そんなAの行動に驚いたような表情を一瞬浮かべる野坂だが、ふっと優しい笑みを浮かべAの隣へと腰掛ける。
A)それで…どうかしたの?こんな時間に呼び出すなんて
野坂)…君に会いたくなった
A)へっ……っからかってるでしょ…
少女漫画に出てくるようなキザなセリフにAは腑抜けた声を漏らすが、すぐさまジトっとした目つきで野坂を見つめる。
野坂)そう聞こえた?
A)うん、聞こえた…野坂くんのそういう言葉は違う意味がありそうでなんか、こう…怖くなるよ
野坂)普通の子なら喜ぶけど…君は特殊だね
A)…それは褒めてるの?貶してるの?
野坂)まさか、褒めてるよ
A)(…本っ当にこの人は……)
後者のようにしか聞こえなかったその言葉にAは僅かに苛立ちを覚える。
野坂)さて…冗談も程々にしてそろそろ本題に入ろうか
A)本題…?
野坂)うん、実はね…
Aは野坂から言われた事は、王帝月ノ宮サッカー部が再開していたということだ。
御堂院が失脚したことでのびのびとサッカーができるようになった、それに加え竹見もサッカー部に戻ってきてくれていたという。
現在の王帝月ノ宮の話は今まであまり耳にして来なかったAは、その話に進んで耳を傾け聞き入っていた。
A)そうだったんだ…良かったね!
そしてその事実を知ったその顔には、先程の不満気な顔は消え去り明るさが戻っていた。
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作者名：39 | 作成日時：2023年8月13日 17時
