夜風に当たりに ページ37
A)こんな時間にお出かけ…?出かけようにも何処にも寄れないと思うけど…
壁に掛かった時計をチラリと見ると、時刻は夜の22時を回っている。
A)まさか深刻な話、とかじゃないよね……
「もう夜中前なのに呼び出すなんて、何かあったのでは…」と悪い方向に考えるAの顔はみるみる青くなっていく。
A)と、ともかく行かないと……しのちゃーんッ!ちょっと外出てくるね!
洗面所にいるしのにも聞こえるように大きな声で伝えると、ひょっこりと顔だけを出してくるしの。
メイクを落としていたのか、頭にはヘアバンドをつけて、片手には拭き取りシートを手に持っていた。
しの)え、こんな時間からぁ?なんか買い忘れた?
A)うん…ちょっと夜風に当たりたくって
敢えて「野坂に呼ばれた」とは言わないAは玄関に向かい靴を履こうと、腰を下ろして片膝をつく。
が、靴紐を結ぶ前にピタリと動きを止める。
A)…臭いかな……
下ろしていた腰を立ち上げ、裾を顔に近付けスンスンと鼻を鳴らし自身の匂いを確かめる。
A)……ちょっと臭うような………流石に着替えないと…
玄関から自室に向かったAはクローゼットを勢いよく左右に開く。
しの)ほーん……気をつけてね?ファンに見つかるとか不審者とかファンに見つかるとか…あっ、変な人に着いてっちゃダメだかんね!?
A)はいはい
途中、自室まで聞こえてくるしのの言葉を聞き流しながらクローゼットを開けてすぐ右に掛けられていた、いつも変装に使っているパーカーを手に取る。
着ていた服を脱ぎ捨てパーカーに着替えたA。
着替えたせいかヨレヨレになってしまった三つ編みを解き慣れた手つきで三つ編みを作り上げ、咥えていたゴムを手に取り綺麗に結ぶ。
再び玄関に向かい靴を履くと、靴箱の上に置きっぱなしだった帽子を深く被る。
しの)困ってる人居てもスルーだかんね!?絶ッ対に着いてっちゃダメだかんねッ?!変な事されそうになったら玉きn
A)分かった分かった……行ってきまあーす!
未だに言い聞かせてくるしのに嫌気がさしたのか、眉を顰めため息混じりにAは家を飛び出した。
しの)ホントに大丈夫かなー……前科あるから心配だわ…
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作者名：39 | 作成日時：2023年8月13日 17時
