ご褒美の件 ページ36
時刻は進み、夕闇はどんどん夜の暗さに変わっていた。
A)っん〜…疲れたあ……
雷門中やら事務所やら…やる事全てを済ませ終えた2人は無事、我が家へと帰ることができた。
しの)もうクタクタ〜…Aちゃん早く開けてぇ
A)はいはい、ええっと鍵……か、ぎ………あった!
「今すぐソファに寝転びたい!」と喚くしのを横目にAは暗闇の中、鞄の中に眠っている家の鍵を探す。
一瞬、失くしたかと思いかけた鍵をドアノブに差し込むと、確かな手応えがありガチャという開錠の音が廊下に木霊する。
ドアを開けると密閉されていた部屋の空気がふっと動いた。
しの)ひっさしぶりの我が家ーっ!
A)あっこら!先に手洗う!
ドアが開いたと同時にしのが颯爽に玄関を通り過ぎ、リビングへと向かう。
脱ぎ散らかしたままのしのの靴を揃えながら注意を促すA。
A)やっぱり埃臭い……消臭剤買わなきゃ
洗い終えた手を、すぐ隣に引っ掛けていたタオルで残った水滴を拭き取る。
犬の子のようにくんくんと鼻を鳴らしては顔をムッと顰めるAは、開きっぱなしのドアを潜る。
すぐ視界に入ったのは無造作に置かれた鞄。
そしてソファで寝そべっているしの。
Aは顰めていた顔を更に歪にさせ「はぁ…」と深いため息を零す。
A)ほーら、寝るのは勝手だけどちゃんと手だけは洗って!
しの)はいはい……っあ"ー、洗いますよっと
気怠げに身体を起き上がらせノタノタと洗面所の方へ向かっていくしのを見届けながら、鞄の中に入っている物を一通り床に置いていく。
【ﾌﾟﾙﾙﾙﾙﾙｯ…ﾌﾟﾙﾙﾙﾙﾙｯ…】
その時、床に置いていたAの携帯が鳴り響きだした。
(()))…野坂くんから…?
「野坂くんからなんて珍しいな…」などと思いながらもAは携帯を手に取り、すいすいと指で覗き電話に出る。
A)もしもし?
野坂)『やぁ、夜遅くにごめんね』
A)ううん大丈夫だよ…どうかしたの?
野坂)『今、時間ある?』
A)あるけど…?
野坂)『それなら鉄塔広場まで来てくれるかな…ご褒美の件、今使わせてもらうよ』
A)えっ鉄塔広場?…今からお出かけするの?
野坂)『うん、待ってるよ』
A)ちょっ……切れた…
Aが返事をする前に無情にも切られてしまった電話。
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作者名：39 | 作成日時：2023年8月13日 17時
