酷な事 ページ32
しの)…いーなあ、のりかのママ優しい人で……うちの"お母さん"とは大違いだわ
A)……うん、本当に…ね
"お母さん"というワードにAは悲しそうに眉を下げる。
少し眠いような、パチリとはしない物思いに沈んでいるような目をしていた。
しの)あっ!…ご、ごめん……そのーっ…うぇえっと……
わざと言ったつもりではない。
だが、結果的にはAを悲しませてしまったしのは慌てて言葉を述べようとする。
が、上手いこと言葉が出てこなくしどろもどろになってしまう。
A)ううん、いいの…本当の事だから、あなたのお母さんと私のお母さんは全く違うもんね
しの)いやぁ…おれもママのことはあんまし知らないし……
その言葉にしのも唸ってしまいまたもや言葉を失ってしまう。
…この会話を聞いているだけでも、なにやら複雑な家庭というのは分かる。
本人達もそれ以上は何も言わず気まずい空気が流れている…と。
のりか)2人共!お待たせっ!
お茶が注がれたコップを手にのりかが戻って来たのだ。
のりか)お菓子持ってきたの!しのの好きな物もあるよ
しの)マジで!?うわーっ!のりか最高ッ!!
のりかの言葉にしのは先程までの哀しげな顔付きから一変、目をキラキラと輝かせる。
A)お菓子まで…ありがとう、のりかちゃん
のりか)へへっ…お礼なら今までの事を聞かせてよ、試合のこととか相手チームのこととか!
しの)全部サッカーのことじゃん
のりか)あったり前!私だって代表選手の枠、まだ諦めてないんだから…!
両手に拳を作り、瞳を火のように燃やすのりかはとてもやる気に満ちている。
彼女もまた小僧丸と同じく代表に追いつこうとする人物の1人なのだ。
A)ふふっ…いいよ、あのね………
Aとしのは今までの出来事をのりかに話す。
とは言ったものの、オリオン財団については話してはいない。
A)(…特訓も欠かさずに、純粋なサッカーをしてるような子にオリオン財団の事を話すなんて…私は無理だな)
「知らないままでいい」…その言葉がAの脳裏に浮かんだ。
もちろん、話すか迷った…が純粋にサッカーを楽しんでいるのりかにとっては酷なことだと思ったのだ。
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作者名：39 | 作成日時：2023年8月13日 17時
