宴の終わり ページ24
てっきり野坂も西蔭たちと合流すると思っていたAは少し申し訳なくなる。
離れていく野坂を横目で見ていると、砂木沼と話し込んでいたヒロトを見つけた。
A)(人のこと放ったらかしで治と話し込んでるなんて…)
そんな事を思っていると胸にムカムカが兆す。
じーっと見つめていたからか、ヒロトも此方に気付いたようで目が合う。
「いい機会だ」そう思ったAは何時しか、しのがしていた舌を出して軽蔑する仕草を思い出す。
Aもそれに習い、ヒロトに向けて「ベーっ!」と舌を出し軽蔑する仕草を行う。
A)(これでおあいこだもんね)
「ふん」とわざとらしく怒った素振りを見せる為に、片頬を膨らましながらマネージャー達の元へと向かう。
少し緊張したが、これで少しは反抗出来たであろうと思い切っているAの顔はとても晴れやかなものだった。
そして。
ヒロト)なッ……んだよっ?!アレ!
当のヒロトは顔を熟れたトマトのように真っ赤にさせ、小さくなっていくAを指さしワナワナと震えていた。
砂木沼)俺は知らないぞ、お前が怒らせたんだろう
ヒロト)んな訳……だあー……クッソ……
ヒロトは火照りきった自分の顔を隠すように額を手で覆う。
ヒロト)(あんなん反則だろ……)
当の本人にとっては、ヒロトに反抗しようと思い切った行動だったのだろう。
だが、ヒロトには真逆だったようだ。
…違う意味でならダメージを与えられてはいるが。
僅かに見えたのはちょろっとした舌の先。
ヒロト)(…可愛いだとか思ってねえ……思ってねえ…)
砂木沼)おい、大丈夫か
ヒロト)お、思ってねえに決まってんだろ!?可愛いだとか!!……っあ
突然声をかけられたせいか。
つい考えていた事が声に出てしまったヒロト。
そんなヒロトを前に砂木沼は呆れた表情でため息をつく。
砂木沼)お前がAをどう思おうが勝手だが、嫌がるような事だけはするなよ
ヒロト)ッうるせえよ!!
段々口数が減っていく、耳まで真っ赤なヒロトの顔は湯気がでそうな程に火照りきっていたのだった。
豪華な宴も特別で素敵な夜も、もう終わりを迎える。
たった一晩であった出来事。
それぞれに様々な思いを刻み、幕を閉じることになった。
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作者名：39 | 作成日時：2023年8月13日 17時
