僕だけの特権 ページ23
野坂)僕は"勝ったから"要求したんだよ、あの時だけだなんて一言も言っていないからね
…流石は野坂と言うべきか。
上手い具合にAよりも上の立場に立ち言いくるめる。
A)そ、それなら私のだって毎回ご褒美あげるなんて言ってないから!
野坂)いや、君だって承知したはずだよ
A)えっ…?
野坂)言ったじゃないか、僕だけの特権だって…それに君も頷いただろう?
その言葉にAは糸をたぐるようにその頃の出来事を思い出す。
…野坂が言うように確かに頷いた気がする。
A)(で、でもあんなのあの時だけって誰だって思うよね……頷いたのもなんとなくで頷いたような気がするし……)
野坂に支えられたまま「うーん」と唸っているAの姿に野坂は目を細める。
野坂)どう?…覚えがあるんじゃないかな
A)っで、でも!
野坂)ん?
A)…………
笑顔のはずなのに、笑っていない野坂。
A)(こ、わくない…怖くない……このままだと一生弄ばれたままに……口に出すだけで変わる!言うんだ…Noって…!No…………っ!)
心の中で何度も覚悟を決めるが「No」という言葉が出てこない。
A)っ……っ〜〜………ハイ…
そして結局頷いてしまった。
野坂の何一つ意見を言わせない雰囲気にAは負けてしまったのだ。
A)(なんであんな軽率な行動とっちゃったのかな…過去の私…!)
野坂)それじゃあ意見も一致したことだし、ご褒美をもらおうか
爽やかに微笑む野坂の言いようは実に清々しいものである。
A)変な事とか無茶ぶりとかはやめてね…
そんな野坂を前にAはもう諦めモードへと入っていた。
野坂)そうだね…僕と出かけてもらおうか
A)えっ…それ、だけ?
意外にも可愛いご褒美を強請る野坂に、Aは拍子抜けしたような顔になる。
野坂)そうだけど…Aちゃんはもっと大胆なご褒美をお望みだったかな?
A)ううん!!お出かけの方が私も嬉しいから!!
A)(大胆なご褒美ってなんなのかよく分からないけど嫌な予感だけはする)
あの笑顔は絶対にそういう意味も込めた笑顔だと確信を得ているAは、首がもげる程に横にブンブンと振るう。
野坂)遠慮しなくてもいいのに…でも、それなら決まりだね
A)(前みたいなご褒美とかじゃなくって良かった…)
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作者名：39 | 作成日時：2023年8月13日 17時
