番犬 ページ22
A)…そういえば西蔭くんは居ないんだね
ちらりと横目でAを一瞥した野坂は再び歩き出す。
野坂)随分おかしなことを聞くね、僕と西蔭はいつも一緒にいるわけじゃないよ
A)ええ…野坂くんが戻ってきてから、一緒にいるところしか見たことないんだけどなぁ…
Aが言うように練習をするにも、食事をするにも部屋にいるにも一緒。
野坂が1人でいることは極めて稀なのだ。
野坂)それを言ってしまえば君だって同じだよ
A)えっ?
野坂)僕が西蔭といつも一緒にいると言うのなら、君はしのちゃんといつも一緒にいるよね
その言葉に身に覚えがあるのか。
Aは納得したような顔になる。
A)あー……妹だからね、なにかと傍にいてくれる方がお互い落ち着くんだと思う
野坂)妹にしては随分と君への執着心が強いね
A)んー……やっぱり傍から見たらそう捉えられるよね
自覚があったのか、Aは野坂の言葉に首を捻る。
野坂が言うようにAだって野坂と立場はそう変わらない。
Aに何かあろうものなら、番犬であるしのがすぐに駆けつけに来るのだから。
野坂)それと、さっきの質問だけど西蔭なら今は一星君と一緒にいるよ
A)一星くんと?
まさか一星と西蔭が一緒にいたとは思わず、驚いたように瞳をみはった。
A)2人って一緒にいるほど仲良かったんだね、どちらかと言うと西蔭くんが敵視してたような…?
Aの記憶上、充だった頃の一星といるとなにかと西蔭が割に入ったりしてきたものだ。
生憎にも仲が良いとは言えない雰囲気だったのを今でも覚えている。
そして元々野坂絡みになると誰彼構わず牙を剥くことがある西蔭。
参謀役を任された一星も例外ではなかったはず。
野坂)あの2人にも、この壮行会で色々あったんだよ
相変わらず無表情で光の宿らない瞳からは何を考えているか想像がつかないがその声色だけは、何処か嬉しそうに聞こえた。
野坂)そうだ
A)…?
野坂)ご褒美貰わないとね、中国戦も勝ったんだから
A)……ん?
突然ご褒美を要求してくる野坂に思わず顔が険しくなる。
野坂)覚えてないのかい?ウズベキスタン戦でのことを
ウズベキスタン……野坂が復帰した時の試合だ。
確かにあの時もご褒美を要求された。
A)…あれはあの時だけのご褒美なのでは……?
だがあの時はあくまで復帰直後にも関わらず、懸命に頑張ってくれた為のものなのだ。
中国戦に勝てたのは勿論、野坂のお陰でもあるがそれを言ってしまえば全員にご褒美の権利がある。
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作者名：39 | 作成日時：2023年8月13日 17時
