懐かしさ ページ18
豪華客船で行われていた壮行会も、もうすぐ終わりを迎えようとしている。
食事の片付けをしているウェイターの人達。
壇上の片付けをしている人達が忙しそうに動き回っている。
A)(…もうすぐ壮行会も終わるんだなぁ)
Aは飲み物を両手に持ちながらボーッとしていた。
そんなAの元へヒロトが歩み寄った。
ヒロト)…おい
A)ん?
ヒロトは親指をエントランスの方へ向けると一言。
ヒロト)…ちょっとツラ貸せ
A)(……嫌な予感しかしない…)
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
船の上のデッキに連れて来られたA。
向かい合う2人に風が当たりAの長い髪が風になびく。
ヒロトの誘い方といい、今にも決闘がはじまりそうなシチュエーションだ。
ヒロト)…ほらよ
A)…うん?
「ほらよと言われても…?」とAは辺りを見渡しキョロキョロと首を動かすが、特に何もない。
ヒロト)馬鹿、上だっての
ヒロトは手すりに両腕を乗せてると、そのまま上半身を凭れかけながら空を見上げた。
A)上?……あっ
見上げると宝石をばら撒いたかのような満点の星空が瞳に映る。
ヒロト)お前、好きなんだろ…星
ヒロトは両腕に頭を乗せて顔をAの方に向ける。
無垢な瞳に星が映り、キラキラと瞬かせ満天の星を見上げている。
A)うん、好き……って、あれ?ヒロトくんに言ったっけ?
ヒロト)永世の奴らが言ってたんだよ……よくタツヤと見てたんだろ
その言葉にAは永世戦の前にお日さま園に行ったこと思い出す。
A)…うん、最初は2人だけで見てたけど段々他の子達にもバレちゃって…結局、瞳子姉さんに怒られたんだよね
A)(あの時も小さい頃もタツヤと見てたな…)
懐かしさに浸るAに対し、ヒロトは「ふーん…」とつまらなさそうだ。
Aは隣で暇そうに両腕の上に頭を乗せて、ぶら下がった手を意味もなくゆらゆらと動かしているヒロト。
その姿を横目で一瞥するとふっと口元を緩ませた。
ヒロト)何ニヤニヤしてんだよ、お前
A)えっ…してた?
ヒロト)してた
ヒロトの言葉に手を口元に当てるA。
A)…なんでもないよ、別に
ヒロト)はあ?なんでもなくないだろ
A)なんでもないのっ
ヒロト)なんだよ、気になんだろ
手すりに掴まり、体を前後にゆらゆらと揺らしはじめるA。
それに合わせるようにドレスの裾がその風にさまざまにはためき、結っていない髪はゆらゆらと揺れる。
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作者名：39 | 作成日時：2023年8月13日 17時
