初めて会った時から ページ48
A)(…っだめだ、気持ち悪くなってきた……)
…過去と重ねているのか、どんどん顔を青くするA。
そんなAの様子に気づかず、男はよりAへと接近するために腰に手を回す。
A)っ!や、やめ…
すぐさま離れようとするもやはり相手は成人した男だ。
段々と呼吸が荒くなり目の前がボヤけていく…。
その時。
？)A!
A)っ!
誰かにぐっと強く引き寄せられる。
A)…氷浦くん
恐る恐る顔を上げると氷浦が庇うかのように前に立っていた。
氷浦)…何か用ですか……
その氷浦の顔はいつもの優しい顔ではなく、キッと男を見つめている。
男3)っ…!い、いえ何も……不愉快な思いをさせてしまいましたこと、深くお詫び申し上げます…
相手が日本代表選手ということもあったからか、男はAに深くお辞儀をする。
男3)…そ、それでは私めはこれで……
男はそう言うとそそくさとその場を後にする。
あっという間の出来事にAはぽかんと口を開けたまま固まる。
そこへ氷浦が「ふぅ」とため息をつくと、Aをちらりと見る。
氷浦)大丈夫だったか?怪我とかは
A)ううん、大丈夫だよ…ありがとう氷浦くん
間一髪のところを助けてもらったAは安心したように微笑む。
その言葉を聞き、先程の険しい顔が嘘かのように優しい顔付きへと戻る氷浦。
氷浦)大事にならなくて良かったよ
A)本当に…氷浦くんが居なかったらどうなってた事か……
想像もしたくもない事態にAはブルッと身体を震わせる。
氷浦)…その、A
A)うん?
氷浦)…こんな時に言うのもどうかと思うけど、写真…撮ってもいい?
A)写真?
氷浦)うん、その……
「綺麗だから」その言葉を声に出すだけで伝わる、そのはずなのに。
どきんどきんと動悸が打つ音が頭にまで響いてうるさい、緊張のせいで目を見て話せない。
そんな言い訳にも聞こえる言葉しか頭に浮かんでこない状態に、氷浦は口篭もってしまう。
A)写真くらいいいけど…私なんかの写真でいいの?
眉を下げて困った顔のまま愛想笑いを浮かべるAに、氷浦はハッとした顔へと変わる。
氷浦)っAは綺麗だよ、俺はずっと綺麗だって思ってた…初めて会った時からずっと
A)えっ
氷浦)あっ
「しまった…」と言わんばかりに耳まで赤くなる氷浦だが、それはAも同じだ。
あんな事を言われて赤くならない人間などいない。
氷浦・A)…………………………
しばらく無言の間が続いた、が。
氷浦)っ…その、ごめん…変な事言って
沈黙を破るかのように氷浦が口を開く。
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作者名：39 x他1人 | 作成日時：2023年7月28日 19時
