嫌悪感 ページ47
男1)初音Aさんに巡音しのさんですね
男はそんなしのの豹変に顔色ひとつ変えず、眼鏡のレンズ越しにニコニコと目を細めたまま笑いながら訊ねてきた。
しの)そーですけど…
A)…あなたは?
違和感のあるその笑い方に2人は少なからず警戒心を抱き、訝しげな表情で男を見上げている。
男1)申し遅れました、私こういうものです
A)ど、どうも…
胸ポケットから取り出した名刺を丁寧に両手で差し出した男に拍子抜けしたのか。
目を瞬かせながらAは差し出された名刺を受け取る。
しの)…それで?何か用ですか?
しのが尋ねると同時に、複数人の足音が不規則にも一気に押し寄せてくる気配を感じた。
A)……なんか嫌な予感するね
しの)あー…これはデジャ感じるわぁ……
足音のする方に視線を向けると先程までディナーを嗜んでいた大人達が、目の色を変えてこちらに迫ってきていた。
男2)初音Aさんに巡音しのさんですよね、話は聞いております!
しの)話ぃ?
女1)今後のイナズマジャパンや芸能活動について一言!
A)こ、今後…?一言?
何となく察してはいたが、前触れもなく突然正装に身を包んだ見知らぬ大人達が押しかけて来た。
かと思えば、佇んでいた2人の周りを囲うように人集りができた。
突然の事態にその中心にいた2人が1番困惑している。
A)よろしくお願いします…い、いえっ!そんな、こちらこそ御足労ありがとうございます…
自分よりも幾分背の高い男女が周りに集ったせいで、中央にいた2人の顔は明日人たちからは窺えないが。
四方八方から質問攻めに合いながらもAはぺこぺこと頭を下げて律儀に答えていた。
明日人)うわ、すごい人…
万作)人気者だな
岩戸)流石、トップアイドルでゴスッ!
その光景に食事の手を止めた明日人と岩戸は思わず見入ってしまう。
隣では万作と岩戸が感心したような表情で傍観していた。
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一方の本人達はというと。
いつの間にか輪から抜け出していたAは、壁際で先程の眼鏡をかけた男とは違う。
誠実そうな男に話しかけられていた。
男3)よかったらあちらでお食事でもどうですか?
A)えっと……さっき食べてきたので
男3)なら食後のデザートなどいかがでしょうか?
胸元に当てているAの手を取り、柔らかく笑う男の目は女慣れしている"それ"だった。
男3)積もる話もありますし、あちらでゆっくりと
A)(この人、凄くしつこい……)
目上の男性ということもあり、遠回しに断ってはいるのだがグイグイと来る男にAは嫌悪感を抱き始める。
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作者名：39 x他1人 | 作成日時：2023年7月28日 19時
