願望と妄想 ページ46
しの)Aーーっ!!
最後の一口を運ぶとしのが猛スピードで走り寄ってきた。
A)んー?
しの)ねぇ!ねぇ!!誰と何があったのッ?!
キラキラと目を輝かせ、期待を込めながら尋ねてくるしのにAは呆れたように笑う。
A)別に何もないよ?ただお喋りしてただけ
お馴染みのしのからの恋愛相談はAも手慣れたように軽く流す。
しの)ええー?タツヤとは何ともなかったの?子文クンとは?一星とは?明日人ともいい感じだったじゃん!?
だが、そんな事でこのしのが素直に引くこともない…。
A)…なんで知ってるの?
しの)ふっふっふっ…しのには何でもお見通しなんだよ!!…それにぃ、タツヤとのなんてあんな見せびらかすようにされたら……ねえ?
にんまりとした顔を隠そうと、口に手を当ててはいるが全く隠しきれないしのにAは呆れてしまう。
A)別に見せびらかしてないよ…タツヤもそんなつもりじゃないし
しの)……マジでそう思ってんの?本っ当に何もなかったの?
…何もなかったと言えば嘘になる。
Aは何と答えたらいいのか分からなくなり黙ってしまう。
しの)……何かあったんだあ
そんなAの姿に察したしのの声色はとても嬉しそうなものだった。
A)あったというか……タツヤが変だっただけだよ
しの)変?
思い出すだけでAは顔が赤くなってしまう。
A)う、ん……私も変になっちゃった
しの)どんな感じに?
A)えっ…え、っと……可愛いとか綺麗とかっ、言われちゃって…ドキドキ…しちゃった……
頬を赤くしながらぽつりぽつりと話すAの姿にきゅん、とトキメキながらもしのは勢いよく頷く。
しの)うーん…うん、うんっ!皆が素直になってびっくりしちゃったんだねぇ、あーーーっ…〜〜可愛いなぁ!
A)わっ…!っもう、楽しんでるでしょう…
赤子をあやすように優しく答えるしのは可愛くて堪らない、といった様子でAに抱きつく。
しの)(いやぁ…まさか本当にやりきるなんて、この天然記念物をドキドキさせるなんてタツヤやるなあ〜)
「結ばれるのも案外すぐだったり…!?」なんて願望とも言い切れる妄想が捗るしの。
と、そんな2人の頭上から大きな影がひとつ。
？)失礼
しの)あ”ぁ”?
成人を過ぎた若い男性の声が2人に呼びかけるように放たれる。
邪魔された苛立ちからか、見ず知らずの人にガラ悪く当たってしまったしの。
A)ちょ、ちょっとしの…
しの)あっ……
指摘されたしのはハッと我に返ると「おほほほほ…」と態とらしく口元に手を当てて、品のいいお嬢様笑いをして見せた。
今更もう遅いが…。
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作者名：39 x他1人 | 作成日時：2023年7月28日 19時
