ドキドキ ページ44
ふと、明日人の口元に目がいった。
A)…明日人くん、動かないでね
明日人)ん?
ポケットからハンカチを取り出すとハムスターのように食べ物を詰め込んで、頬を膨らませている明日人に近付く。
明日人)えっ、A?
A)口周りについてるよ、拭くから動かないで
キョトンとした顔で目を瞬かせる明日人の顔は、まるで小動物のようだ。
そんな明日人にAは眉を落としながら口元についた食べかすを優しく拭う。
A)…はい、取れたよ
明日人)う、うん…サンキューA!
へへっ、と無邪気な笑顔を見せる明日人にAもクスリと笑みを浮かべる。
A)タキシードには零しちゃダメだからね?
明日人)分かってる!……よーし、食うぞー!
使ったハンカチを折り畳みながら言っては見たが、明日人はさっそく口の中に焼き飯を掻き込んでいる。
…どうやら言っても無駄のようだった。
A)それじゃあ私もご飯取りに行くから
明日人)んっ!
モゴモゴと口を動かしながら、忙しなく手をブンブンと振ってくる明日人に再び笑みが零れる。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
明日人)……………………
今度こそ料理の方へと移動するAの姿を明日人は口を動かしながら見つめる。
明日人)(さっき、なんであんなにドキドキしたんだろう?)
さっき…Aが自分の口を拭いた時であろう。
顔にこそは出ていなかったが、あの時の自分は確かにドキドキしていた。
だが、それが何故そうなったのかまでは分からない明日人は自分の左胸に手を当て考え込む。
…しかし、分からないものは分からない。
その答えに辿り着いた明日人は再び、焼き飯やら唐揚げやらを口の中に掻き込んだのだった。
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作者名：39 x他1人 | 作成日時：2023年7月28日 19時
