慧星に響く歌声は6【オリオンの刻印】 (ページ38)

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言葉だけじゃページ38

タツヤside

…俺は何てことを言ってるんだろう

…言葉が溢れ出して抑えきれなくなってしまって…

A)さ、さささ、すが…に言い過ぎ、だよ…

世界で1番、なんてそんなのあり得ないとAは思ったのだろう。

だが、タツヤにとって言い過ぎなんてことはない。

タツヤ)…知らないでしょ、俺がAを前にしてどれだけ緊張してるか……

A)…?

タツヤ)Aは…

タツヤは何かを言いかけたがピタリと止めた。

……「Aちゃんみたいなザ・鈍感にはこのくらい言わなきゃ伝わんないんだよ!」……

そして再び、しのの言葉が頭に聞こえた。

…いや、何を言っても俺の気持ちを100%伝えることは無理だ

…お姫様みたい?ありきたりな言葉過ぎる

…可愛い…?そんな一言で片付けられるわけ無い

…俺の気持ちは…綺麗だとか、魅力的だとか…そんな陳腐な言葉だけで表現できるはずがない

…今更そんな取ってつけたようなことを言ったって、きっと信じてもらえないだろう

…素直代表の坂野上みたいに、言葉で自分の気持ちを伝えることが上手だったらな…

…俺、こんなに口下手だったっけ…

…照れくさくて、何て伝えていいか分からなくて、グズグズしていた俺が悪いんだけど

…もどかしい

…言葉だけじゃ伝えきれ無いことが、悔しい…

…どうすれば伝えられる?

…どうやったら、俺の想いをまるごと分かってもらえるんだろう

…なんで俺はこんなにもAにこだわるんだろう

…でもAには分かって欲しいんだ

…Aは自分が思ってるより遥かに素敵な人だって

…俺は、そう思ってるって

タツヤ)…っ

するとタツヤは突然Aの手を取った。

そして自分の左胸にAの手の平を当てた。

A)えっ?タ、タツヤ?

突然のことに別の意味でドキドキしてしまうA。

タツヤ)……分かる?心臓の音…

A)………………

心臓の忙しない音がAにも届いた。

…さっきからすごい心臓がうるさい、これもきっとAのせいだ

…昔からAといると俺はおかしくなる

……この胸が痛んだり、こうやってドキドキしたり…

…俺にそんなことできるの、Aだけだな

タツヤ)…Aは本当に…不思議だな

…ずっと名前を付けずにいた、この気持ち

…この左胸こそ、俺がAを意識している証なんだ

A)あ、あの…っ…その……手…

タツヤ)っ、ご、ごめん!

Aの声でタツヤは我に返ったは慌てて手を離す。

タツヤ)…ほ、本当にごめん…

A)う、ううん…大丈夫…

恥ずかしくて目を逸らす2人。

タツヤ)(俺はAに何てことを…!)

タツヤは勢いであんなことをしてしまったことに今更恥じた。