世界で1番 ページ37
A)…くしゅ!
冷たい風がAの頬を撫でくしゃみが出る。
タツヤ)…!ここ寒いよね、コレ着てなよ
タツヤは自分の上着を脱ぐとAに差し出す。
A)えっ、いいよそんな…
タツヤ)Aは俺より薄着だろ?風邪引いちゃダメだから
有無を言わさずに上着をかけるタツヤ。
A)……ありがとう…
A)(…優しいなあ、タツヤの香りって安心する……)
タツヤに包まれているような感覚が心地よいのか、Aはついつい頬を緩ませてしまう。
タツヤ)………………
当のタツヤはAが自分の上着を着ているだけで、胸の辺りがおかしな感覚になった。
タツヤ)…できれば、さ
A)うん?
タツヤ)…壮行会が終わるまでずっとそれ着ててもらいたいんだけど……
A)えっ、なんで?
タツヤ)…ドレス…すごく似合ってるから……
A)えっ
タツヤ)…だから、知らない人とかが近寄って来ないか心配で……
A)そんな心配はいらないと思うけど…
タツヤ)…分かってないね、Aは…
A)…?
タツヤの言葉の意味が分からずつい小首を傾げる。
そんなAの姿にもどかしさを感じたタツヤ。
……「例えばぁ〜……綺麗だよ…とかっ、僕だけのお姫様…とかっ!」……
ふと、先程のしのとの会話が頭に響く。
タツヤは1度だけ深呼吸をすると、覚悟を決めたような顔付きへと変わる。
タツヤ)Aは気づいてないだろうけど…誰に狙われてもおかしくないくらい魅力的だと思ってる
A)…………………
突然のことに驚き過ぎて何も言えないA。
タツヤ)…言っておくけどお世辞なんかじゃないよ、今のAの姿を見た時から…ずっと思ってた
そんな言葉を聞いてマトモでいられる人間がいるのだろうか。
Aは心臓が爆発するのではないのか、というほど高鳴っている。
タツヤはAの目から逸らさずまっすぐに見つめるが、Aの方こそ恥ずかしさから目を逸らしたくなる。
タツヤ)Aは今、きっと世界で1番綺麗なんだろうなって…
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作者名：39 x他1人 | 作成日時：2023年7月28日 19時
