靴擦れ ページ36
A)…やっぱり
外にあるベンチに座ってヒールを脱いでみる。
思った通り、靴擦れというやつだった。
A)(いつも厚底しか履かないもんなぁ)
万一の時の為に、秋からもらっていた絆創膏を貼り痛みが引くのを待つ。
A)…ふぅ
海風に吹かれて、少しだけ肌寒いと感じた。
その時。
？)…A、大丈夫か?
A)…!
顔を上げるとタツヤが目の前にいた。
A)…タツヤ
タツヤ)…足、痛むの?
A)……あっうん、でも今は安静にしてるしすぐ痛みも取れるよ
タツヤ)…やっぱり靴擦れだったんだ
A)やっぱりって?
タツヤ)さっき、ぎこちない歩き方で出て行っただろ?だから何となく
A)…見られちゃってた…?
A)(静かに出て行ったつもりだったのにな…結局、誰かに心配かけちゃった…)
「しかもよりにもよってタツヤに…」とAは軽く後悔する。
タツヤ)…Aがここにいるまで俺もいて良い?
A)え?
タツヤは返事を待たず隣に腰を下ろした。
A)(もしかして1人でいる私に気を遣ってくれてる?)
A)私なら大丈夫だよ?すぐ良くなるだろうから、そしたらすぐに戻るし…
タツヤ)Aの大丈夫は信用ならないな
A)う"っ…
痛いところを突かれてしまい、ぐうの音も出ないAはそのまま黙ってしまう。
タツヤ)…それに、俺がAのそばにいたいんだ
A)えっ
タツヤ)…それでも駄目かな
A)……だ、めじゃ、ない…けど……
からかうでもなく、いつにもなく真剣なタツヤ。
そんなタツヤを前にAは言葉に詰まってしまい、しどろもどろな言葉しか出てこない。
…顔が熱を帯びた感覚を覚えたのは何故だろうか。
タツヤは自分でも何故こんなことをしているか分からなかった。
どうして今、Aの隣に座っているのか…。
こんなところヒロトに見られたらまずいはずなのに。
タツヤ)(…いや、俺はただAに謝りたくて来ただけだ、もちろん心配だったのもあるけどそれ以外に理由は無い)
心の中で言い訳を済ませると再びAに話しかける。
タツヤ)…さっきはヒロトがごめん、アイツまた酷いこと言って
A)ああ、いいの…気にしてないから
タツヤ)………
平気なふりをしているがタツヤには分かっている。
昔からAはどうも自分に自信が持てないことを。
褒め言葉は真に受けずに、ヒロトが言うような言葉は真に受けてしまう。
そしてそれを決して表には出さないように、と溜め込んでしまうことを。
だが、タツヤはAに何と言葉をかけていいか分からなくなり黙ってしまう。
言いたい言葉など沢山あるはずなのに…。
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作者名：39 x他1人 | 作成日時：2023年7月28日 19時
