煮え切らない態度 ページ33
まだ視線を感じると思い目をやるとヒロトと目が合った。
ヒロト)っ…
ヒロトは一瞬、目が合うとすぐに逸らしたがまたすぐにAの目を見た。
ヒロト)…そ、その……
何やらAに言いたいことがあるようだ。
A)…どうしたの?
A)(ヒロトくん、汗すごい…何か顔も赤いし…大丈夫かな?)
ヒロト)……か、かかか…
A)か?
ヒロト)……ブ、ブスはブスのまんまだな!
A)………………
ヒロトは必死にコメントを絞り出そうとするも、結局それしか言えなかった。
A)う、うるさいなぁ…!
A)(心配して損した……でも具合が悪いみたいじゃなくてよかった)
タツヤ)…バカ…
ヒロトとAを離れたところで見ていたタツヤ。
頭を押さえ横に振り、ため息を零す。
素直になれるチャンスを逃したヒロトを見てもどかしい気持ちだった。
しの)いーの?タツヤは言いに行かなくって
そこへ階段を降りてきたしのがタツヤのそばに寄り、小声で話しかける。
タツヤ)言いに行く…?
しの)Aちゃんに!例えばぁ〜……綺麗だよ…とかっ、僕だけのお姫様…とかっ!
わざわざ声色まで変えてキザなセリフを吐くしのにタツヤは困ったように笑う。
タツヤ)まさか、俺はそんなキャラでも無いよ
しの)”永世の貴公子”サマが何言ってんだか、Aちゃんみたいなザ・鈍感にはこのくらい言わなきゃ伝わんないんだよ!
「振り向いて貰えるチャンスだぜ〜?」と肘で突いてくるしのの言葉にタツヤは分かりやすく目を見開く。
タツヤ)俺は……っそれよりもヒロトが素直になれるか心配だ
タツヤの口から出てきた予想外の言葉にしのはぱちくりと目を瞬かせるが、すぐさま眉を顰める。
しの)はあ〜〜〜?お前、それマジで言ってんの?
タツヤ)本気だけど…俺がヒロトを応援したら悪いか?
この期に及んでもまだ、自分ではなく他人を優先するというタツヤの悪い癖が発動していた。
そんな状況にしのは呆れの混じった深いため息を吐く。
しの)…はぁーっ……いつまで誤魔化し続けてんだよ、そんなんじゃ一生相手にされねーよ
タツヤの煮え切らない態度にしのは苛立ちを覚えながら、Aの元へと駆け寄って行った。
タツヤ)(……違う、そんなのじゃない…だって俺達は家族じゃないか……)
そんなしのの言葉に胸を痛めながらもいつものように自分達は家族である、と何度も自分に言い聞かせる。
こうすれば自分だけが我慢すれば全て良い方向に進む、と分かっているのだから…。
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作者名：39 x他1人 | 作成日時：2023年7月28日 19時
