手品 ページ22
報道陣からの取材も無事に終わりA達はミーティングルームから食堂の方へ場所を移した。
剛陣)いや〜それにしてもお前があんなすげえサッカー選手だったなんて、知らなかったぜ!
そんな中、ハオの後ろに回った剛陣が容赦なく小さな背中を手で叩き続ける。
すると不満そうに頬を膨らませたハオはさっとそれを交わした。
ハオ)しかし、こうして皆に素顔を晒すのも違和感があるな
A)その布、何に使うの?
ハオ)手品をお見せしますね
何も無いところから布を取り出している時点で手品のようにも見えるが…。
深くは突っ込まずAを含め、ジャパン選手は頭に？を浮かべた。
にししっと悪戯っぽく笑ってからハオは青い布に手を入れると、なんと被り物を取り出した。
A)ハオくん…?
その被り物はいつも彼が"李子文"を装う時に使っていた変装道具のようなものである。
そして青い布をAに押し付けたハオはすっぽり、と被り物を頭から被った。
子文)ど、どうもー!またお世話になります
リ・ハオ改め、無敵ヶ原富士丸改め、李子文です〜!
岩戸)改めすぎでゴス
ぺこぺこと頭を下げて自己紹介をするハオこと、子文に岩戸が剃刀のような鋭いツッコミを入れる。
周りも態度が豹変したハオに苦笑気味だ。
一方のAも。
A)うーん…その被り物かあ…
青い布を持ったまま眉を八の字に寄せている。
子文)そっ、そんなAさん!この被り物も可愛いですよ!!
ほら!よく見てください!この辺とか、この辺とか！!すごく愛嬌があると思いませんか?!
チャームポイントらしいピンクに染まった丸い頬と、ぱっちりおめめを指しながら子文が理解を求めようとアピールをする。
だが、当の本人であるAは小難しそうに首を傾けたままだ。
子文)中身はリ・ハオなんですからッ!!
A)……うん…
煮え切らない言葉と共にするりと目を逸らされてしまう。
雷に打たれたようなショックを受けた子文はしくしくと泣きながら、食堂の隅っ子で蹲り床に「の」の字をぐるぐると書いている。
剛陣)気持ち、分かるぜ
子文)剛陣さん…!
そんないじけた子文の肩を剛陣が慰めるように手を置いた。
…一体何の茶番を見せられているのだろうか。
誰もがそう思う中、しのだけは「ざまあねーな!」と満足そうに鼻を鳴らしていた。
余程、ハオとAが姉弟として見られたのが嫌だったのだろう…。
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作者名：39 x他1人 | 作成日時：2023年7月28日 19時
