寂しがり屋 ページ19
円堂)じゃあ俺、野坂にも伝えてくるな!
そう言うのが先か、Aが返事をする前に消え去る円堂。
A)(わざわざ言いに来るだなんて相変わらず律儀というか真っ直ぐというか……)
「そういう所が皆、惹かれちゃうんだろうな」と改めて”円堂”という人の良さを理解する。
そして、チラリと氷浦の方へと視線を移すがその表情は何処か寂しげに見えた。
A)氷浦くん、どうしたの?体調悪い?
氷浦)…い…ん……なせ………かっ……ら………
A)え?
ゴニョゴニョと小さな声で言っていた為、この騒がしい更衣室では聞こえなかった。
氷浦)…最近、Aと話せてなかったから……
もう一度と聞き返すとそんな言葉が返ってきたのだ。
Aは目をぱちくりと大きく見開くと笑いを吹き出してしまった。
何故笑うのか分からない氷浦は、先程から赤かった頬をより赤くした。
A)ふふっ…ごめんごめん…!随分と寂しがり屋だなぁって
「ふふふっ」と笑みを零すAに、氷浦はムッと顔を顰める。
氷浦)…俺だってAと話したかったんだ、悪いか?
小さな子供のように拗ねる氷浦を見て、Aの母性本能を擽られながらも微笑ましくなる。
A)ううん、そう思ってくれて嬉しい
氷浦)…え?
A)だってそれ程、私達仲良しってことでしょう?
「だからすっごく嬉しい」とはにかむAに氷浦は更に頬を赤く染めた。
氷浦)…うん、仲良しだね
A)ねっ!
にこにこと微笑むAに氷浦も優しく微笑み返す。
Aにとっては何気ない事だが。
改めて本人の口から聞けたり、自分だけがそう思っていた訳じゃ無かったという事実を知れて氷浦にとってはとても嬉しい事なのだ。
氷浦)(…今度はちゃんと言えてよかった)
…今度と言うのは、日本代表に選ばれた時に乗ったバスでの出来事を思い出しているのだろうか。
未だに離さずに握りしめているAの小さな手を優しく包みながら。
氷浦は本当に嬉しそうに微笑んでいたのだ。
宿舎に帰る前、中国チームからサインを要求されたA達は帰る頃にはもっとヘトヘトになったとか何とか……。
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作者名：39 x他1人 | 作成日時：2023年7月28日 19時
