強い独占欲 ページ18
更衣室では疲れきった日本メンバーが嬉しそうに談話していた。
A)(…早く着替えたい)
一方、Aは浮かれない顔をしていた。
氷浦)…A、どうかしたのか?
A)へっ?何にもないよ、どうかしたの?
そんなAを見て心配になった氷浦が声をかけるがAは首を横に振る。
氷浦)いや、元気がないように見えて
A)あぁ…早く着替えたいなーって思ってただけだよ
そう言うAは羽織をヒラヒラと掴みながら目尻を下げる。
氷浦)そうなのか?こんなにか、可愛い…の、に……
所々カタコトだがAの目を真っ直ぐ見つめる。
Aは一瞬、きょとんとした表情をするがすぐさまあどけない笑顔へと変わる。
A)ふふっ、本当?中華風のお洋服って可愛いもんね
周りに花が飛んでいるかのように、にこにこと笑うAはくるりと一回転する。
そんなAの行動に氷浦はドキドキしていた。
円堂)A!
A)あ、円堂くん
そこへ円堂がAに「こっちだ!」と言わんばかりに手を振る。
呼ばれた為、円堂の元へ行こうとAは歩き出そうとする…が。
A)…氷浦くん?
氷浦)……………
氷浦がAの手を掴んで離さないのだ。
氷浦)(俺、何してるんだ…?こんなのAが困ってる…のに…あっちに行って欲しくない……)
どうしていいのか分からずオロオロしていると、中々来ないAの元へ円堂が駆け寄ってきた。
円堂)どうしたんだ?
A)あ、ええっと…ちょっと疲れちゃって…えへへ
氷浦が何故離してくれないのかは分からないが何となくAは誤魔化す。
A)それより円堂くん、どうかしたの?
円堂)ああ、"アシュラ"が完成するまで野坂と一緒に止めてくれてただろ?
Aが居なかったら野坂にもっと負担が掛かってたし、お前達がサポートしてくれたから"アシュラ"も完成したんだ
円堂は「ありがとなっ!」と付け足すとニカッと眩しい笑顔をAに向ける。
A)…ふふっ、私円堂くんのその笑顔好きだなあ
円堂)えっ?そ、そうか…?
流石の円堂も気恥しいのか、桃色に染めた頬をポリポリと指先で掻く。
A)うん、何だかこっちまで元気になれちゃうもん
両手をぐっ、と拳に変えて小さくガッツポーズをするAは意気衝天だという事を表す。
そんな2人のやり取りに氷浦はズキリと心が痛む。
…せめて、自分と話している間は他の人と話して欲しくない。
…今だけでも自分を見ていて欲しい。
そんな我儘と捉えられる、強い独占欲が氷浦の身体の奥底にぐるぐると掻き回る。
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作者名：39 x他1人 | 作成日時：2023年7月28日 19時
