【まほやく】雪降る科学者のソナタ (ページ8)

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『ブラッドリーは何歳？800とか？』

「そんなに行ってねぇよ……大体600だな。テラは1000くらいだったと思うぜ、オーエンよりは間違いなく下だからな。」

『北の誰か死んだら絶対テラが召喚されてた。』

「縁起でもねぇこと言うな、しかも何で誇らしげなんだよ。」

彼は結局何もくすねていなかった。別に盗んでくれても良かったのだが、ただ変わらず熱心に標本やら剥製やらを少年のように見つめていた。何となく彼は手癖が悪いような気がしていて、盗賊団の頭を張っていたと今さっき聞かされて妙に納得してしまった。

そして事の顛末も大体聞いた。近いうちに賢者様御一行がこの家に訪れるらしい。テラは相当美しい魔法使いだったから私もかなり美化されてそうで嫌だな、実際は真っ黒の頭に真っ黒の瞳でカラスのような風貌だ。まぁ不思議な雰囲気ではあるだろうから、自分の見た目はそこまで嫌いではないけど。

「テラは何で死んだんだ？」

『病気。聞いてなかった？』

「いや知ってたけどよ……。」

赤紫のガラス玉(割るといい匂いがして気絶する)を手の中でガチャガチャと弄びながら彼は口篭る。北の魔法使い同士、何か感じる物があるんだろう。

別に隠すことでも無いのだがテラは私の為に死んだようなものだから厳密に言うと病死では無い。テラの死を目前にした時、パキパキとヒビが入っていく身体に言いようの知れぬ神秘を感じた。魔法使いは魔法使いを殺すのが趣味だと聞いていたけれど、その気持ちが何だか分かるような気がした。

私の顔を凝視してくるブラッドリーに何？と聞けば本当に魔法使いみたいな奴だな、と感心される。核心から近からず遠からずな批評に苦笑を返し、ホットミルクを啜る。

｢帰りたくねえな。｣

『居心地良すぎて？』

｢おう。｣

『夜が明けたら絶対帰って貰うよ。』

豪快に笑うブラッドリーにブランケットを投げ、家内設備を勝手に使っていいことを伝え、私は部屋へ向かった。ブラッドリーは聞いてるんだか聞いてないんだか分からない様子で相槌を打っていた、まぁ多分聞いてるんだろう。

何だか今日はどっと疲れた。賢者はいつ頃着くのだろうか。あまり調べられると嫌だな、この家は疚しいものだらけだから……。