二話 ページ2
杜王グランドホテル。
最上階から見下ろす杜王町の景色は素晴らしいものだった。
「A、なにか頼むか?」
「い、要らないです……」
「そうか、何かあったら直ぐに連絡しろ。良いな?」
ここに来る直前に承太郎に渡された黒い携帯電話を胸元で握り締めると承太郎は、ふっと笑顔になって、私の頭を撫でた。
「はい……」
それじゃあ言ってくるぜ、と承太郎は部屋を後にした。
1989年、私が目覚めたのは病院だった。
暖かい日差しと冷たい風と、そして香しい花の香りがする真っ白な病室で、私は今までの何一つを覚えていないことに気が付いた。
右手首にはぐるりと縫い付けた痕があって、身体のあちこちが軋んだ音を立てても、その理由は何一つわからなかった。
十年の月日が流れ、28歳となった今でも、記憶は戻らず、級友だったという空条承太郎君の手助けが無ければ不安で仕方が無い。
記憶の中にわずかに横切る金色の髪は、果たして自分のものなのか、それとも他の誰かのものなのか。
それだけが頼りなのだが、如何せん、そこから先には全く進まないのだ。
いつまでも、承太郎に甘えているわけにはいかない。
一刻も早く、何か、少しでも思い出さなければ。
この杜王町で、記憶の欠片を見つけることが出来ればいいのだが────。
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金剛石 - 続き気になると思ったらめっちゃ前の作品かーい^_^ (9月14日 11時) (レス) @page26 id: 97d79e1a3f (このIDを非表示/違反報告)
無益(プロフ) - 続きみたいと思ってきたら7年前の作品かーい^^ (7月24日 23時) (レス) @page26 id: 21d8a5b4ec (このIDを非表示/違反報告)
じゃがりこの虜(プロフ) - 続き見たいと思ったら数年も前の作品かーい^_^ (2022年6月20日 21時) (レス) @page26 id: 9b1b149eae (このIDを非表示/違反報告)
??(プロフ) - 更新の希望あるかなってコメント見にきたら6年前の作品かーい^_^ (2022年6月5日 22時) (レス) @page26 id: 81e883109e (このIDを非表示/違反報告)
れい - 更新待ってます!! (2021年8月4日 23時) (レス) id: 231e6087c7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:東雲出雲 x他3人 | 作成日時:2016年5月6日 22時