▼み、見失った…。 ページ33
アーサーはちょっと考えた後、おずおずと口を開いた。
アーサー
『私は生まれてこの方、友人がいたことが無い。ああ、信頼出来る人間はいたとも。皆、私を慕って尽くしてくれた。』
嬉しそうにする反面、彼はまた寂しそうに目を伏せた。
アーサー
『だが、学校へ行ったり、そこで笑い、愚痴を言い合ったり、助け合ったり。そんなことの出来る人間はいなかった。だから、友人というものに憧れがあった…。』
要するに、彼は友達同士がやるようなことをやってみたかったらしい。
A
『いいよ、やろうよそれ。』
アーサー
『え……?』
私は自分の教室から鉛筆とノート、教科書やらなんやら勉強道具一式を取ってくると、筆箱からペンを取り出し、階段の窓ガラスに今日の日付を書いた。
A
『君、ここから動けないんだからここでやるしかないでしょ。はい、そのノートと鉛筆持って!』
アーサー
『えっ?あ、ああ。』
A
『おほん。えー、本日の授業はこれで終わりだ!宿題はしっかりやってくるように!』
(↑低音)
アーサー
『……!先生の真似だね!』
私は教科書からプリントを取り出し、アーサーに手渡す。
A
『面倒臭いなー。アーサー、この宿題一緒にやらない?』
アーサー
『ああA…、いいとも!』
アーサーは頭が良かった。
言動からして薄々予感はしていたけど、楽しそうにプリントを解き進めていく。
アーサー
『A、この問題は?』
アーサー
『これはどうするんだい?』
分からない場所も、教えてあげれば嬉しそうに目を細める。
当たり前にしてきたから気づけなかったけど、何かを知るって本当は楽しいことなんだ。
アーサー
『……放課後、学校で居残り勉強するとはこんな感じなのだろうね。』
A
『あ……。』
アーサーがペンを置いて、こちらを見つめていた。
プリントの回答欄は全て埋め尽くされていた。
アーサー
『とても有意義な時間だった…。ありがとうA。』
A
『アーサー、身体が!』
彼の身体は黄金の粒子へと変わり、砕けていく。
アーサー
『……最期に、一ついいかな。』
A
『な…に。』
アーサー
『僕と君は、…友人になれたかい?』
彼は微笑んでいた。
in4階廊下
A
『ッ!!』
目を開ける。
そこはいつもの階段だった。
賑やかな教室へと続く、普通の。
窓からは、空が見える。
『当たり前だよ。』
そう、何故か呟いた。
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てでん - 今更かもしれませんが……どちゃくそ面白かったです (2020年11月15日 0時) (レス) id: 210a21a08c (このIDを非表示/違反報告)
ラブさん - 孔明リリィとイチャコラ(健全) (2020年4月4日 13時) (レス) id: 794297709b (このIDを非表示/違反報告)
味噌汁 - ちょっとピンクな展開からギャグになるのが堪らなくおもしろいですッ!!!!!! (2019年12月18日 16時) (レス) id: 6a1031d99d (このIDを非表示/違反報告)
クレハ(プロフ) - とても今さら感がありますが…金平糖は南蛮貿易の時に入ってきたお菓子ですよ〜… (2019年6月2日 11時) (レス) id: de682292c0 (このIDを非表示/違反報告)
第一村人 - お疲れ様です!一気読みしたのですがとても素敵なお話で魅入りました!欲を言ってしまえば続編期待してます! (2018年6月24日 1時) (レス) id: 2f2b87b930 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:九曜桜(クヨウザクラ) | 作成日時:2017年12月28日 13時