もう一人の薬屋は絶世の美女。【薬屋のひとりごと】

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ＮＯside




宴席はざわついていた。



それもそうだ、毒見役が何の躊躇いもなく料理を口に運んでいるのだから。





「(毒見が怯えながら食事する姿の何が面白いんだか)」



「おい見ろ李白、あの毒見役やたら威勢がいいぞ。しかも美女だ」



「毒見なんて見てても……


(…あの毒見役、さっきの娘じゃないか。顔が見えにくくて分かりづらかったが…


見た目だけで言えば上級妃にもなれるだろう


後で本命の簪を渡しに行こうか…)」





その毒見役…基Aが次に口にしたのは羮(スープ)だった。



飲んで少し間が空いた後、Aは恍惚とした表情に変わった。



その場にいる誰もが息を呑む。



武官や文官は勿論、女性でさえもが頬を赤く染めた。



中には「綺麗…」と呟く人もいる。





「(どれだけうまい料理なんだ)」





李白がそう思った瞬間。





『…これ、毒です』





衝撃の言葉がAから発せられた。









Aside




『…これ、毒です』





それだけ伝えて、私はそそくさと宴席を出た。



途中紅娘に声を掛けられたが、答える余裕はなく、会釈だけしてその場を去る。



手ぬぐいで口を抑えながら水場まで急ぐ。



水場に着くと、水で口をゆすいだ。



そこにある人が声を掛けてきた。





「随分と元気な毒見役だな」



『あ、壬氏さま。ごきげんよう』





そう、いつも通り壬氏さまである。





「ご機嫌はそっちだろ」



『(…あ、久しぶりの毒で頬が緩んで笑いかけたみたいに……)』





そんな呑気な私とは対照的に、壬氏さまは不機嫌そうだ。





『(毒見役が美味しそうに毒を食べるのは不味いと思ってすぐに宴席を離れたけど…


まあ侍女があんな行動をすれば怒られるに決まってるわよね…)』





そんな事を考えていると、急に誰かに手を引っ張られる感覚がした。



誰かに、と言ってもそんな事をするのはこの場に一人しかいないのだが。





『…何をするのですか』



「医務室に向かうに決まってるだろ。毒を食らってぴんぴんしているなんて洒落にならないぞ」



『(…なんだ、不機嫌だと思ったらそれのことね)


…すみません。毒は手ぬぐいに吐き出しましたので身体に異常はありません


(できれば吐き出したくなかったけれど。


もしあの時飲んでいれば、今頃は痺れが全身にめぐって＿＿＿＿


…まあ大事になるから出来ないけれど)』




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