起床 ページ9
「ん………。」
朝、窓から差し込む日光でふと目が覚めた。
まだ眠いなとモゾモゾと布団の中で寝返りをうち、ハッとする。
そうだ此処竜君のベッドなんだった…！と思い出し、慌ててベッドから起き上がり横を見る。しかしそこに竜君の姿は無く、あれ？と思いふとデスクの方に顔を向ける。
「ｽｩ………ｽｩ………。」
「………寝てる…。」
竜君は仕事の疲れで寝落ちしてしまったのか、デスクの椅子に座ったまま腕を組んだ姿勢で眠っていた。
一応スーツから家着に着替えてはいるものの、いくら何でも寒そうだしそもそも体を痛めそうだ…。
「とりあえず…毛布…」
ベッドから毛布を抜き取り、起こさないように竜君を毛布で軽く包む形で毛布を掛けてあげる。
と、同時に竜君の長い睫毛がピク、と動いたと思うと紫の瞳と目が合う。しかも毛布を掛けてあげる体勢だったので顔の距離が近い。
「うわ…ッ、！？」
竜君はその近さに驚いたのか一気に目が冷めたようでガタガタッと反射的に後ろに下がろうと椅子を乱雑に動かす。
「ご、ごめん竜君。驚かせるつもりじゃ…」
「………お前何やって、…ん？あぁ、毛布か…。」
口元に手の甲を当てながら狼狽する竜君だったが、ふと床に落ちた毛布に気が付きそれを拾い上げながら状況を察した様だった。
「別に寒くねーから気にしなくて良かったのに。」
「でも薄着だし…風邪ひいたら蘭ちゃんも心配するよ。」
「いや、兄ちゃんは別に………。…まぁ、サンキュ。」
ポリポリと頬を掻き、竜君は視線をこちらに向けないまま軽く感謝の意を述べた。
流石にさっきの事があって若干気まずい空気の中、でも、と思わず私は笑って別の話を切り出した。
「竜君、仕事しながら寝ちゃうなんて意外な所あるんだね？」
「は？」
そう伝えると竜君は何の話だ？と言わんばかりに怪訝そうな顔でこちらを見る。
「だって椅子で寝てたのは疲れて寝落ちしちゃったんでしょ？」
「………はー。」
私が首を傾げると、竜君は頭を抱えて溜息をつく。
どうやら私が思っていたことと現実は違ったらしい。
「お前馬鹿か？お前がベッドで寝てるから此処で寝てたんだよ。」
「え、そうなの！？なら言ってくれたら私が椅子で寝たのに、」
「だーから、そういう事じゃねーんだよ。も〜めんどい、良いから顔洗え。お前も起きたとこだろ。」
面倒くさそうな竜君に背中を押され、洗面台へ連れて行かれた。
(…竜君、私の事意識してないって言ってたのに…。)
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作者名：結城 | 作成日時：2021年11月9日 6時
