面接 ページ13
「何しに、って…。」
「………。」
首領さんは私をじっと見つめるだけで、それ以上は何も言わない。
私は戸惑って、つい視線を自分の膝に落とした。
何しに来たの？なんて、私が聞きたい。そもそも私は別に此処で働きたいと思った訳でも、自分の意志で来た訳でもない。
幼馴染の巻き添えを喰らって、急に仕事と家が無くなっただけ。仕事だって、別に私はスーパーのバイトでも何でも良いんだ。わざわざこんな怖いところで働く必要は無い。
「コイツ、急に仕事が無くなって…」
「竜胆。俺、今お前に聞いた？」
沈黙している私を見兼ねたのか、竜君がフォローを挟んでくれるが首領さんの一言に気圧されたらしくそのまま押し黙ってしまった。
でも黙っていてもどうにもならないのは確かだし、どうせ何喋ってもこんな怖い人が私を採用しそうにないからもう気にしないで話そう！と引くに引けない状況なのを再確認すると顔を上げて首領さんの目を見据える。
一瞬首領さんの目の色が変わった様に見えたけど、すぐに元の虚無という言葉が相応しい生気の無い瞳に戻った。
「バイトを探しに来ました！」
「…此処はコンビニとかスーパーじゃねーけど。」
「わ、わかってます…。あの、掃除とか洗濯とか、そういう仕事をするバイトとかって募集してますか…！？？？」
「特に。」
「あっ。…じゃあ、面接は終わりで…。」
速攻撃沈してしまった私は即座に諦めて自分から試合終了を提案する。
背後の2人から「おい。」と小さく怒られたけど、どっちにしても無理なものは無理だ。それに私が反社会的勢力の人達に力添えできるのは掃除、洗濯、料理くらいしか無いのも事実。それを現状求めてないと言われてしまえばそれまでで。
暴力とか詐欺とか人殺しなんて絶対に無理だしそんな事したら親が泣く…！！！
「そんなソッコー諦める程度の気持ちなんだ？」
「え…っ、まぁ、そうですね…。」
「じゃあ次何処にバイト探しに行く？」
「………スーパー、ですかね。」
突然首領さんがふ、と微かに笑った。
ん？と首を傾げた私に更に質問を投げかける首領さん。
「お前、家事に自信あんの？」
「いや、そこまででは…普通です。」
「じゃあ何で自分から家政婦買って出たんだよ。」
「竜君と蘭ちゃんがオススメしてきたので…。」
「お前、菓子作りとか得意？」
「え？あぁ、まぁ程々に…？」
「フーン…。」
「…？」
「まさか首領、」
「A、だっけ。別にやりたきゃ掃除すれば？」
「えっ！？」
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作者名：結城 | 作成日時：2021年11月9日 6時
