闇に広がるは海と愛※ifルート&◯亡描写&沈没描写あり ページ33
『タイタニック』のパロディ的なものです｡ネタバレも含まれるので､まだ見ていらっしゃらない方はバックしてください｡
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sideなし
その夜｡陽一はとある少女と豪華客船で出会い､その船が沈没してしまうという夢を見た｡
陽一はその少女のことを知らないはずだったが､なぜか知っている気がしていた｡
少女も自己紹介すらしていないが､陽一のことはまるで前から知っているような言動が多かった｡
｢早く乗ってよ!私は後から乗って行く!｣
そう叫ぶのは､救命ボートの横で揉めている少女だった｡
彼女達は避難する為に救命ボートへ乗ろうとしたのだが､不運なことに､その船は1人分の席しか残っていなかったのだ｡
陽一｢いいや!俺が後から乗る!｣
周囲の目線を気にせずに反論しながら声を荒げるのは桃寺陽一だ｡もう14歳だというのに､声量はマイクに機嫌の悪い子供かと間違えるほど大きい｡
お互いを思う2人口論は段々と激しくなっていったが､やがて少女の方が黙り込んでしまう｡
｢…本当に､後の船から来る?｣
不安そうな目で陽一を見つめると､ギュッとその手を握り締める｡
陽一｢ああ､乗ってくる｡約束するから乗ってくれ｣
そう言って陽一は少女を船に押し込める｡
｢…絶対だよ!絶対だからね!｣
夜の海に降りて行く船を見下ろしながら､陽一は笑みを浮かべて頷いた｡
…その笑顔は､どこか寂しげだった｡
陽一side
陽一｢…わりぃな｡俺､ここで死ぬっぽいわ｣
上空に咲く火の花を眺めながら､ボソッと呟いてみる｡
この花火はもちろん鑑賞用に上げているのではない｡SOS信号として上げているのだ｡
実は陽一は船の中を見回した時､あのボートを逃せば次のボートはないと悟ったのだ｡そう知っていながら､少女を助ける為に嘘を吐いて逃がしたのだ｡
陽一｢悪く思うなよ､｣
何かを言いかけた瞬間､船が大きく横に傾き始めた___沈没の瞬間がやってきたのだ｡
船に取り残された人々は､深淵の闇に染まった海へと振り落とされていく｡
そして陽一も…満たされた表情を浮かべながら消えていったのだ｡
ﾁｭﾝﾁｭﾝ
朝､夢から覚めた陽一は放心したように天井を眺めていた｡
不思議なことに､その朝の天井は霞んで見えていた｡
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作者名：コードネーム13@現在第五人格の企画参加者募集 x他1人 | 作者ホームページ：ない
作成日時：2023年3月15日 17時
