【派生】及ばぬ恋の滝登り3 (ページ32)

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甘い香りの毒花から目覚める時※ifルートページ32

こちらのお話の続きです｡
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___､悪い人達はもういないから…早く目を覚まして｡皆が待っているよ｡

陽一｢ん､んん…?｣

いきなり真っ黒な視界が白く眩しい世界を映し出し､思わず目を細める｡

しばらくすると周囲が徐々に色づいてきて､やがてどこかの病室のような場所になっていった｡

スヴェンガリ｢っ…陽一…｣

親父の声が聞こえたと思った次の瞬間､全身に少し温かい痛みを感じた｡抱きしめられていた｡

スヴェンガリ｢…良かった､本当に良かった…｣

涙声でそう呟くと､親父は更に腕の力を強めた｡

陽一｢おいやめろって…背骨折れる…｣

恥ずかしいのもあって離してもらおうとするが､親父は全く聞いてくれない｡

ヘル｢まぁまぁ､そのくらい許してあげなよ｣

そう言いながら入ってきたのは､ほんのりと目が赤くなっているヘル先生だった…多分､さっきまで泣いていたんだろうな｡

ルキノ先生はそんなヘル先生の後ろから着いて来て､『無事で良かった』とだけ呟いていた｡

スヴェンガリ｢ああ､2人とも帰ってなかったのかい?｣

ようやく力を緩めてくれた親父から少し距離を取ると､2人が扉の前辺りで立っているのが見えた｡

ヘル｢はぁ⁉︎帰るわけないでしょバカなの⁉︎アンタが桃ちゃんの手握って心配していたみたいに､こっちだってずっとずっと心配していたんだから!｣

ルキノ｢まぁまぁ…落ち着け｣

興奮気味にキレるヘル先生を､ルキノ先生が必死に宥める｡

ずっと､握ってた…?親父が…?

気になって自分の手を見てみると､不健康なほど白い自分の手にくっきりと赤い痕が残っていた｡

親父は｢…このままﾀﾋぬんじゃないかと思ったら､気が気でなくて…｣と少し小さな声で言った｡

申し訳ねぇな､皆に不安な気持ちにさせて…親父にこんな顔させて…

陽一｢…もう平気だ､親父｡俺は大丈夫だから…｣

気づいた時には､俺は声を絞り出しながらそう言っていた｡

親父は俺を心配そうに見つめてからニッコリと笑って､頭を撫でてくれた｡

スヴェンガリ｢…陽一は優しい子だね､本当に｡ありがとう｣

その言葉の意味は分からなかったが､少なくともそこに無償の愛があることだけは分かった｡

…お袋が来るまでは､このまま撫でていてほしいな…なんて｡