□80.熱宿る、5cm先 ページ42
***
｢……なおき…｣
直輝｢ん？｣
｢…今日…、一緒に寝よ……？｣
.
でもこのモヤモヤをどうにかしたい。
直輝の1番近くにいるのは自分だって証明したい。
直輝の全てが欲しい。
例え私に対する恋心なんて微塵もなかったとしても。
…そう思って意を決して言ったのに。
この “寝よう” に、
特別な意味が含まれていることを察した直輝の表情は一気に冷たくなってしまった。
.
直輝｢…それはだめ。｣
｢…なんで｣
直輝｢…なんでも。｣
｢やだ……、｣
直輝｢…A、｣
｢…やだっ………！｣
.
.
こんなにキッパリと断られるなんて思わなかったが、
引くに引けなくて、まるで子供のように駄々をこねる。
.
｢…なんで？この間は一緒に寝てくれたじゃん…！｣
直輝｢あれはそういうことじゃない。
それにあの時はAが離れなかったから…｣
｢…じゃあ今日も離れない｣
直輝｢A…、離れて。｣
｢……な…ん…で……ｯ…｣
.
なんで今日に限ってそんなに頑ななの。
そんなに私のことが嫌になったのか…、
と、またしても涙が溢れてくる。
.
やけになって彼の首筋に何度もキスを落とす。
ちゅ、ちゅ…、とわざと音をたてるみたいに。
これでも精一杯誘っているつもりなのに直輝は全く動かない。
＿＿＿＿…ああ、やっぱり私じゃダメなのか…、
と思っていた刹那
.
.
｢…わ…っ……！｣
直輝｢…………煽りすぎ……｣
.
視界がぐるりと反転して、ベットの上に押し倒される。
両手首が彼の大きな手に掴まれていて、
顔と顔の距離はたったの5cmほど。
…彼の表情は、私よりも苦しそうだった。
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作者名：紙兎
| 作成日時：2020年2月14日 23時
